心配事の96パーセントは<無駄>と判明…精神分析医提案「余計な心配で人生を無駄にしない方法」
厚生労働省が公開している「患者調査」によると、精神疾患を持つ外来患者数は増加傾向にあるそう。そのようななか、「悩みが増えた時こそ、ネガティブな思考を生み出す原因を探ることが重要」と語るのは、難病・パーキンソン病と闘う韓国の精神分析医キム・ヘナム先生。今回は、キム先生のベストセラー『「大人」を解放する30歳からの心理学』から「不安の90%を消す最もシンプルな方法」を紹介します。 【書影】パーキンソン病の精神分析医が教える、感情の取り扱い説明書。キム・ヘナム・渡辺麻土香『「大人」を解放する30歳からの心理学』 * * * * * * * ◆不安の90%を消す最もシンプルな方法 考え過ぎる人のほとんどは、ただの心配性だ。長々と考え続ければ、思考はネガティブなほうへと流れやすくなる。その代表例こそが心配性だ。 もしこうなったらどうしよう、失敗したら、予想どおりにいかなかったら……。 そんなふうに心配し始めたら、頭の中は一瞬にして不安でいっぱいになる。すると何もしないうちから時間だけが流れてエネルギーを消耗し、無駄に疲れてしまうものだ。 それどころか、そもそも私たちが心配するのはピンチに備えるためだというのに、何も行動していないから解決すべき問題は残ったままである。 こうした心配症の人たちにとって、「きっとうまくいく」、「大したことはない」、「大丈夫」という言葉は、何の救いにもならない。なぜなら彼らは今すぐにでも心配のタネに押しつぶされんばかりの不安に包まれているからだ。
◆心配の96パーセントは無駄 だが、世界的な作家でライフコーチでもあるアーニー・ゼリンスキーは、『スローライフの素602』(井辻朱美訳、ヴォイス)で心配について次のように述べている。 「われわれの心配の40パーセントは、決して起きない出来事に対するもの、30パーセントは、すでに起きてしまった出来事に対するもの、そして22パーセントは取るに足らないことに対するもの、4パーセントはわれわれが変えられないことに関するもの、そして4パーセントだけが、われわれが働きかけることのできる物事に対するものだそうです。つまり心配事の96パーセントは、コントロールできない物事に対する心配だというわけ。心配の96パーセントは無駄だということになりますね」 心配がどれほど無駄なのかは、こういう質問をしてみればわかる。 「1年前の今日、どんな心配をしていたか覚えていますか?」 人は大抵3日前に何を食べたかすら覚えていない。 これに関して19世紀のドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、人の記憶に関する研究の中で「忘却曲線」という理論を残した。 時間の経過に伴う記憶の損失程度を研究したのだ。エビングハウスは、「子音、母音、子音」で成り立つ無意味なアルファベット3文字を被検者に覚えさせ、その記憶がどれくらいで失われるかを調査した。被験者は20分もすると覚えた内容の42%を忘れ、1時間後には56%、30日後には79%を忘れた。 つまり人は、たった1か月で覚えた内容の80%近くを忘れるのだ。 では1年後はどうだろう? もしかすると、ほとんどの人は「何かの実験をした」という程度しか覚えていないかもしれない。 人はそれだけ簡単に忘れる「忘却の生き物」だ。したがって今は深刻に悩んでいても、1年後に振り返れば何を悩んでいたかさえ忘れている可能性がある。 だとしたら、余計な心配で人生を無駄にしないためには、どうしたらよいのだろう?
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