岸田首相が解散を見送った理由は「東京で異変」があったから? 「政権与党離れ」の兆候 データで読み解く政治(2)
東京で今年行われた地方選挙で「異変」が相次いでいる。23区議選のうち、4月の統一地方選とそれ以降に計22区議選が実施された結果、日本維新の会や参政党が伸長した。特に維新は合計50人が当選し、前回の11人から4倍以上に躍進。一方で、政権与党である自民、公明両党は前回2019年より議席や得票を大きく減らしたのだ。岸田文雄首相はこの間、衆院解散・総選挙を“におわせる”物言いを続けてきたが、6月21日の通常国会会期末の直前になって解散見送りを宣言。首都・東京で起きた「政権与党離れ」の兆候が、首相の描いた解散戦略に影響を与えたのだろうか。(共同通信社=中田良太) ▽自民、公明両党は今回得票を16万票減らした まず、22区議選を振り返ってみる。4月23日の統一地方選で葛飾区、足立区を除く21区議選が実施され、続いて5月21日に足立区議選が挙行された。 各区選挙管理委員会が公表した開票結果を見ると、苦戦を強いられたのは自民、公明両党だ。自民党は候補者計316人のうち80人が落選し、当選者は236人にとどまった。前回は338人のうち272人が当選しており、獲得議席は36議席減。渋谷、杉並、足立ではそれぞれ7人が敗北している。
一方、公明党は練馬で4人が落選するなど8人が涙をのんだ。当選者は157人。前回選挙では目標通り全員当選しており、8人も落選したのは公明党が現在の形となった1998年以降で最多だった。 自民、公明両党への「逆風」は、獲得議席だけではない。得票数にも表れている。 自民党は台東区議選以外の21区議選で前回より得票を減らし、22区の合計では11万票以上のマイナスとなった。公明党は22区議選全てで前回選を下回り、合計5万票弱が減少した。政権与党の自民、公明両党で総計16万票以上を減らした計算になる。 「責任を痛感している。生まれ変わった決意で党勢拡大の先頭に立ち、強靱な党の構築へ全身全霊、戦い抜く」。公明党の山口那津男代表が、5月15日の全国県代表協議会で陳謝したのもうなずける、深刻な事態だった。 ▽躍進した維新の得票は前回選の5倍超に急増した 退潮傾向を示した自民党、公明党とは対照的に、躍進を印象付けたのが日本維新の会だ。22区議選の当選者は前回11人から4倍超の50人。立候補者52人のうち落選したのはわずか2人だ。得票数は、前回候補者がいなかった文京や台東などを含めて全区議選で増加した。22区議選の合計得票は約23万9000票で、前回選の約4万6000票から5倍超まで積み増した。