岸田首相が解散を見送った理由は「東京で異変」があったから? 「政権与党離れ」の兆候 データで読み解く政治(2)
▽自民党は公明党の支援を得られずに次期衆院選を戦う? 大田区の都議補選では自民党はもう一つ、頭の痛い問題と向き合う結果になった。東京における公明党との選挙協力の解消だ。 理由は、衆院小選挙区定数「10増10減」で新設される東京28区の公明党候補の擁立で折り合えなかったこと。公明党は5月25日に自民党にこう伝達している。 「東京都内の衆院小選挙区では自民党候補を全員推薦しない」 東京28区を自民党が譲らなかったことに対する「意趣返し」となった。 このあおりを受け、都議補選でも自民党候補は公明党から推薦を得られなかった。結果的に当選こそできたものの、立憲民主党や共産党の支援を受けて約4万8000票を獲得した無所属候補の後塵を拝した。 「自民党候補が2位当選だったのは、公明党の推薦が得られなかったことが原因だ」と自民党関係者はぼやく。 日本維新の会の躍進と相まって「次期衆院選では、東京はかなり厳しい戦いになるかもしれない」。自民党候補には、公明党票頼みの衆院議員が多いからだ。
次期衆院選で東京都内の小選挙区は、5小選挙区増えて30小選挙区になる。日本維新の会が6月20日時点で擁立を決めているのはこのうち9小選挙区にとどまっている。ただ、馬場伸幸代表は野党第1党を奪取するため、全289小選挙区への候補者擁立を目標に掲げる。特に東京は「絶対に擁立だ」と幹部は断言する。 そんな中、自民党の梶山弘志幹事長代行は6月20日の記者会見で、公明党が東京29区に立てる岡本三成衆院議員を推薦する方向で検討していると明かした。関係修復に向けて秋波を送った格好だ。それでも、公明党が翻意するかどうかは見通せない。 ▽政権党離れが無党派層の多い東京から起こっている 専門家は、東京の有権者の投票動向をどう分析しているのか。 中央大の佐々木信夫名誉教授(地方自治論)はこう指摘する。「現状への不満や、将来への危機感から、有権者が自公政権の政治に『ノー』を突きつけた。無党派層が多い東京で政権党離れが起こっている」。結果として「改革してくれそうな保守政党が期待を集め、新興政党が伸長した」と分析した。特に維新は、本拠地である大阪での「成果」を引き合いに税金の無駄遣い解消をアピールする戦略が奏功したと評する。