地方高校生の「壁」、首都圏大学受験の情報・環境格差に挑む東大生団体の願い、ロールモデル不在や予備校不足など課題は山積
地方には、東大志望者や大学生のロールモデルがいない
東京大学発行の『大学案内2024』入試データによると、令和5年度に一般選抜で入学した東大生2997人のうち、東京出身者は1008人、関東出身者は1725人で全体の約57%を占める。首都圏の大学を目指す地方在住の高校生に立ちはだかる数多くの壁を取り払い、誰もが自由に進路を選べるようになってほしい――。このような思いを抱えた東大生が運営する団体「FairWind」(フェアウィンド)は、今年で創設15年目を迎えた。現在代表を務める増村莉子さん(法学部3年)、副代表の佐々木諒太さん(経済学部3年)、外務担当の山本博健さん(法学部3年)の3名に活動の詳細を伺った。 【写真で見る】離島の高校の生徒67名を対象にしたオンラインセミナーの様子 「地方高校生に、追い風(=fair wind)を」という理念のもと、2009年12月に創設された東京大学の学生による団体「FairWind」。昨年度10月時点で150人を超えるメンバーが活動しているが、その多くが地方出身者で首都圏との情報格差や環境格差に悩み、FairWindと接点を持った当事者だ。 「私自身宮城県の出身で、周りが東北大学を目指す中、東大を目指す高校生のロールモデルを求めてFairWindを知りました」と山本さん。代表の増村さん、副代表の佐々木さんも高校生のときにFairWindを知ったという。 「メンバーには、地方と首都圏のさまざまな格差に疑問を抱き、是正するために力になりたいという首都圏出身の学生もいます」(山本さん) FairWindの活動内容は、地方の高校生を招いて行う東大キャンパスツアーや、メンバーが現地へ赴く地方出張セミナー、Zoomを活用したオンラインセミナーなど多岐にわたる。主な繁忙期は夏休み。長期休暇の間にイベントを行ってほしいと、高校の教員から多くの依頼が舞い込むそうだ。2022年度は、52校、2482名の生徒に対し企画を実施した。 「高校によって課題が異なるため、一校一校に完全オーダーメイドで企画内容を考えます。東大対策を希望する進学校からの依頼もあれば、大学とは何をする場所なのかをプレゼンしてほしいという離島の高校からの依頼もあり、非常に幅が広いです」(山本さん) 直近では、今年3月に奄美大島にある鹿児島県立大島高等学校の生徒に向けてオンラインセミナーを開催した。 「先生から、『離島の高校生はそもそも大学生と話す機会がないため、話をしてほしい』という依頼をいただいたのです。過去には、沖永良部島にある鹿児島県立沖永良部高等学校に出張・オンラインのハイブリッドセミナーも実施しました。地方では、首都園の大学を目指す高校生だけでなく、大学生というロールモデル自体が不足していると実感します」(増村さん)