「助っ人」のはずが現場の負担に…教育の質を揺るがす一部の臨時的任用教員に募る不安
人間誰しも、愚痴を聞いてほしいときもあれば、喜びを分かち合いたいときもある。それは学校の教員も同じだ。つらい経験に共感したり、笑い話にほっこりしたり、はたまた、成功体験をシェアしたり――、そんな学校現場の知られざる「リアル」をお届けしていく。 【図表で見る】全国の公立小学校における臨時的任用教員の割合は約11%(2022年) 今回、話を聞いたのは、小学校教員の清水美恵子さん(仮名)。常勤講師とも呼ばれる非正規教員「臨時的任用教員」の質を憂慮していると打ち明ける。ベテラン教員の清水さんを取り巻く「臨任のリアル」に迫る。 投稿者:清水美恵子(仮名) 年齢:59歳 勤務先:公立小学校
市販の履歴書で登録可能、採用試験に受からない事実
「学力と指導力が圧倒的に不足している臨任が増えていることに、強い危機感を抱いています」 厳しい口調で打ち明けるのは、神奈川県で小学校教員をしている清水さん。現在は学級担任を若手に譲り、数学の専科教員と教育相談コーディネーターを担当している。保護者や同僚の教員の相談に乗る、いわゆるカウンセラーのような立場だ。 有名国立大学卒業後、小学校教員一筋だった清水さんは、定年を目前にして「臨時的任用教員(以下、臨任)」のリアルを知ってほしいと、使命感に駆られて応募したという。 臨任は正規教員の妊娠出産休暇や育児休業の取得、病気休職などで欠員が生じた際に、教育委員会の判断により、期間限定の代替人材として雇用される。学級担任を担当することもあり、仕事内容は正規教員と変わらないケースも多い。 臨任の多くは、「教員免許を有しているが、採用試験に合格していない人物」が、都道府県や指定都市教育委員会などに登録し、雇用されている。民間企業であれば、資格やスキル、これまでのキャリアなど、職務遂行能力をはかるデータも登録されるものだが、そうした項目はないという。申込書類は「市販の履歴書1通」のみという都道府県もある。「教育委員会は精査の手を抜いているのではないか」と清水さんは疑問視している。 正規教員と臨任の待遇の違いを問題視する声もある。臨任の給与水準の低さや、不安定な雇用は看過できないが、その一方で清水さんは「現在の競争率の観点で言えば、採用試験に受からないことに問題があるのではないか」と首をかしげる。 「ライフスタイルの関係であえて臨任を選択している人もいますが、実際は教員採用試験に受からなくて正規教員になれないため、臨任を続けている人も少なくありません。ただ、私の時代に比べると、採用試験もかなり軟化しています。そもそも正規教員は慢性的な人手不足であり、採用試験の競争倍率は決して高くありません。それなのに受からないということは、基礎的な学力が低いのではないかと疑問を持ってしまいます」