地方高校生の「壁」、首都圏大学受験の情報・環境格差に挑む東大生団体の願い、ロールモデル不在や予備校不足など課題は山積
地方出身というだけで自分の可能性を狭めないで
寄せられる声の中には、学生団体では解決しづらい内容も多い。一番はお金の問題だという。「親の手を離れて一人暮らしをするとなると、どうしてもお金がかかってしまいます。家賃が手頃な学生マンションや、家賃補助・奨学金制度がもっと充実すればと思うのですが」(山本さん) また、親の意識変革もアプローチが難しいテーマだ。過去にはFairWindが保護者向けに話をする機会もあったというが、現在はそうした活動はない。その代わり、メンバーの大学生活や高校時代の勉強法などを紹介する無料のメールマガジン「追い風通信」(毎週水曜と日曜の午後8時配信)を、受験生の親が購読しているケースもあるそうだ。 <過去に配信された「追い風通信」の記事(一部)> こんにちは!文科一類1年のN.K.です。 好きでもないことを頑張るのってしんどいですよね。 早起きとか、お菓子を我慢することとか、お風呂掃除とか。(もちろん得意な人もいると思います、尊敬します。) わたしの場合、好きではないことのひとつは勉強です。 「東大生なのに?」と思われるかもしれませんが… ということで、自分の経験も踏まえて、勉強のモチベーション維持法を2つ紹介します。 定期テストにも応用できるので、受験はまだ先という方もぜひ! ーーーーーーーーーーー 1.良い想像をする とはいえ、そもそも一極集中の社会自体にも問題がありそうだ。増村さんは「予備校も大学も東京に集中している」と語る。 「予備校が都会に集中しているため、地方の浪人生が参加できるのはオンライン授業ばかりになってしまいます。中には、浪人するためだけに都会に出る人もいるほどです。しかし、地方から東京に出るのにハードルがあるのはたしかですから、地方にも予備校が増えると嬉しいかもしれません。 また地元の金沢で言えば、トップの金沢大学から下は一気に偏差値が下がってしまいます。地方にも東大レベルの大学があったり、例えば東大サテライトキャンパスのような分校があったりしてもよいのではと思います」(増村さん) これからのFairWindが目指す姿について、山本さんはこう見据える。「現時点では、大学卒業後をイメージできる情報を高校生に伝えられていません。今後は、就職の状況など社会に出てからの姿も併せて紹介していきたいと考えています」。 また昨今、企画を依頼する高校が固定化されていることを踏まえ、より多くの高校にFairWindを知ってもらうべく広報活動にも注力している。佐々木さんによれば、大学内の別団体とも協力し、実績のない高校に幅広くアプローチしているそうだ。 最後に、代表の増村さんと副代表の佐々木さんから地方で暮らす高校生へのエールをもらった。 「大学に入ってからも、高校時代の経験が生かされていると日々感じています。もし今、大学進学や高校生活のことで悩んでいても、その悩みは決して無駄にならないので安心してほしいです」(増村さん) 「可能性は1つではありません。FairWindの企画を通じてさまざまな選択肢を知り、最終的に自分が望む進路を目指してほしい。今後の生きる道を決めるのは、親や教員ではなく、自分自身であることを忘れずにいてほしいです」(佐々木さん) (文:せきねみき、注記のない写真:TY / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部