世界を驚かせた参戦わずか2年目での初優勝【ホンダF1挑戦60年の軌跡②】
前年の失敗と経験をふまえて着実に進化
2024年8月2日、ホンダは1964年8月2日に行われたドイツGPでのF1初参戦から、60年を迎えた。1963年に初めて四輪車を発売したばかりの当時のホンダにとって、世界最高峰の四輪レース参戦は無謀ともいえるものだったが、その挑戦があってこそ、いまのホンダがあると言えるだろう。ここではその軌跡を当時のマシンとともに振り返ってみよう。 【写真はこちら】1965年のF1最終戦メキシコGPで優勝したリッチー・ギンサー。ホンダの記念すべきF1初優勝となった。(全3枚)
F1参戦の2年目、翌1966年からエンジン規定が変わり3000ccまで排気量が拡大されることが発表されたため、新型車を開発せず前年のマシン「RA271」の改良で臨む方針が採られた。 エンジンはRA271と同じ1500ccの12気筒を搭載しながら、規定(450kg)より75kgも重かった車両重量の軽減と信頼性の向上が図られ、エンジン出力も引き上げられた。またドライバーにロニー・バックナムのほかに開発能力に優れたリッチー・ギンサーを加えることで2カー体制を確立した。 しかし、5戦走っても、ギンサーが2度完走を果たして、6位がやっとだった。次の第6戦イタリアGPでは、2台ともエンジントラブルでリタイア。第7戦アメリカGPでもオーバーヒートに悩まされて勝てなかった。 そして最終戦のメキシコGP。標高2000mの高地にあるため空気の希薄なサーキットで、高地にあわせて開発した燃料噴射装置が有効に働いた。予選3番手からスタートしたギンサーはレースの主導権を握り、結局一度もその座を譲ることなくトップでチェッカーを受け、ホンダに記念すべき初優勝をもたらしたのだった。F1に参戦してから、わずか2年目での快挙であった。 この時に中村が東京のホンダ本社へ打電した電報の一文「来た、見た、勝った!」という言葉は日本のモータースポーツ史に残る名言のひとつとなった。
■ホンダRA272(1965)
車体構造:アルミニウムモノコック、アルミボディ 車体重量:498kg ホイールベース:2300mm トレッド(前/後):1350/1370mm サスペンション:ダブルウイッシュボーン トランスミッション:ホンダ製6速MT 燃料タンク:180L タイヤ:グッドイヤー エンジン型式:ホンダ RA272E 形式:水冷横置き60度V型12気筒DOHC48バルブ 総排気量:1495cc 最高出力:230ps 最高回転数:12000rpm エンジン重量:215kg(ギアボックス含む)
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