和田秀樹 メンタルの病には<薬>が効くものと治らないものがある。でも薬で治らない症状に、日本の精神医療は完全にお手上げで…
◆ストレス性の心の病は薬だけでは治せない 「ストレスチェック」で引っかかるような心の病は、多少なりともストレスにまつわるカウンセリングが必要となります。 しかし、薬物療法中心の精神科医は、「眠れないなら薬を出しましょうね」「軽いうつだから、うつ病の薬を出しておきます」で終わらせてしまう。 本質的なストレスにまつわるカウンセリングは行わない。というか、行えない。だから、治らない患者さんがどんどん増えていく状況になっています。 ストレスチェックで引っかかる人は、上司のパワハラがひどいとか、会社の人間関係がつらいといったことがストレスの引き金(ストレッサー)となり、何らかの症状を引き起こしている場合がほとんどです。 適応障害はその代表的なものです。適応障害に効く薬はありません。でも、心配しなくて大丈夫です。適応障害は薬を飲まなくても治るからです。
◆適応障害の治療法は基本的には2つ 最も簡単で効果的なのは「環境を変える」ことです。 適応障害の人は、うつ病と違って家に帰ったら元気になるのが特徴です。つまり、ストレッサーがないところへ行けば症状はすぐに消えます。 診察の際に「職場の居心地が悪いなら、自分に合った別の職場へ移ることを考えてはいかがですか?」と提案したり、「今の時代、どこも人手不足だから就職先はありますよ」と伝えたりするだけでも、症状がやわらぐ場合があります。 職場を移れない場合は、「認知療法」という精神療法が有効です。同じ状況にあっても、物事の捉え方(認知)を変えることで、ストレスの原因をうまく受け流せるようにする。その手助けをするのが認知療法です。 しかし、そういうカウンセリングをちゃんとできる医者が絶対的に不足しているのです。適応障害に対しても、薬だけで対応する医者がほとんどなので、職場環境がつらくて眠れなかった人が薬で眠れるようになって、「何とか会社へ通えるようにはなりました」というのがせいぜい。 治せる病気なのに、根本的な解決に至る例が驚くほど少ないことが残念でなりません。結局、また嫌な職場へ通っているうちにメンタルを病み、いつまでたっても良くならない適応障害の人や、うつ病の人がごまんとたまってくるのです。 職場では、「あの人、また休職することになった」といわれて、さらに居心地が悪くなる、という悪循環です。この調査では、若い世代ほど精神疾患による休職者・休暇取得者の割合が高いことが明らかにされています。
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