武豊騎手「ここにいる馬は幸せ」 伝統があり美しいアルリファーの調教拠点／三嶋まりえ奮闘記
【三嶋まりえ奮闘記・第５回】
５日目はアルリファーの調教取材のため、オウニングヒルにあるジョセフ・オブライエン厩舎の調教場へ。松島オーナーが見守る中、初コンタクトを取った武豊騎手。その様子については別の記事を見ていただくとして…。 初めて訪れたオウニングヒルの調教場は、すごい…と何度もつぶやいてしまうほど広く、きれいで、かっこいい。カシェルの街から１時間ほど離れた、周りには何もない場所。行くまでの道のりは、道は細いし、日の出前で真っ暗だったので不安になりましたが、着いてみると、想像を超える美しさに驚きました。 「カリガノグレーシング」の看板の横で迎えてくれたのは、ジョセフ・オブライエン調教師です。いくつものトロフィーが置いてある事務所で、まずは武豊騎手とこの日の調教の打ち合わせ。「アルリファーはすごく賢い馬だ」と伝え、調教メニューを説明していました。
オウニングヒル調教場で驚いたのは…
その後、武豊騎手は調教騎乗へ向かい、松島オーナーとジョセフ師の談笑タイムに。ジョセフ師は、このオウニングヒルにある調教場の歴史について話していました。祖父のジョー・クロウリー師の時代から母アンマリー師とエイダン師、そして今はジョセフ師が調教を行う、何十年もの歴史がある調教場。 「母が祖父（クロウリー師）から調教師免許を受け継いで、数年後にナショナルハント（障害）リーディングトレーナーに輝き、その後、僕が生まれました。そのときにエイダンが母から調教師免許を受け継いだんです。だから母の方が父より先にチャンピオンになったんです。その後、父にクールモアからオファーが来て、バリードイルへ。その後ここ（オウニングヒル）は、１０～１５年くらい空いていたので、公開されたトレーニングセンターとしていろんな調教師が使っていました」 歴史ある調教場ですが、建物は美しく管理され、絵画に出てきそうなほど。驚いたのは、馬たちのおとなしさです。調教を終えた馬がすぐ隣の道（写真参照）から帰ってくるのですが、その間、隣ではまだ調教が行われています。それでも馬たちは微動だにせず、落ち着いた様子で戻っていくのです。 「馬にはルーティンがあります。毎日やっていれば馬も慣れて、慣れることでストレスがなくなり、よく食べ、よく寝るようになって、いい循環ができるんです」 日本では馬が暴れる様子をよく見ますが、ここではありません。武豊騎手が「ここにいる馬は幸せだと思う」と言っていましたが、本当にそうだと思います。美しく、広大な調教場。ここでトレーニングを積んできたアルリファーの走りに、ますます期待が高まりました。
三嶋 まりえ
