能登地震でもやっぱり出た、根拠のない「人工地震」 デマはなぜ広がる? かつてはオウム真理教も「阪神大震災は地震兵器の攻撃」
天災や大事故といった出来事に見舞われると、その原因や関連の出来事を巡って、さまざまな臆測が飛び交う。それらには、デマやうわさなど根拠のなく無責任なものが少なくないが、拡散することで社会不安や暴力を生み出す危険性もはらんでいる。 【写真】能登半島地震でX(旧ツイッター)に投稿された虚偽の救助要請
震災のたびに頭をもたげる、根拠のない情報のひとつが「人工地震」だ。また、外国人による「窃盗団」といった噂も、被災地に広がる。なぜ広まり、信じるのか。その背景を探った。(共同通信=佐藤大介) ▽「うわさ」の拡散 最大震度7を観測した能登半島地震が発生する前日の2023年12月31日、X(旧ツイッター)に「リンクが全部消えている謎」との書き込みが投稿された。この日、石川県能登町の変電所で「3回爆発音」との報道が、インターネットのニュースサイトであったが、すぐに記事が削除された。これを疑問視する内容だった。 この投稿は元日の地震発生直後から注目を集め、閲覧回数は200万回を超え、5千件超がリポスト(転載)された。これを基に、変電所の「爆発音」を「人工地震」と関連付け、記事が削除されたのは「人工地震を隠蔽するため」とのうわさが拡散する。 実際、変電所で爆発はあったのだろうか。北陸電力によると、変電所でトラブルがあった事実はなく、爆発音も把握していない。12月31日に能登町で250戸、輪島市で80戸が停電したが、原因は送電線への倒木か樹木の接触で、約2時間後に復旧した。
記事を出した北陸放送は「変電所で爆発音が3回聞こえたという通報が住民から消防へ寄せられ、停電もあったので記事にした」と説明する。北陸電力などの発表で変電所に異常がなかいことが判明したため、記事を削除したという。 北陸電力の担当者は「変電所のトラブルであれば、より大規模な停電が起きると考えられる。それを隠すことなど不可能だ」と話し、人工地震と結び付けようとするうわさを一蹴ている。 人工地震を信じる人は、この説明をどう思うのか。関東在住の男性に話を聞くと、こう断言された。 「爆発音は人工地震の工作中に起きたもので、記事の削除は隠蔽が目的だ」。北陸電力などの説明は「操作されている」。ネット上では人工地震の主張への批判も目立つが、「圧力には屈しない」と突っぱねた。 ネット上の掲示板では「なぜ爆発音の記事が削除されたのか」との質問が約6万回閲覧されている。満足度が高いとされた回答には、こう記されていた。