海洋保全途上国・日本。「周回遅れ」と言われる世界トレンドとの差[教えて!井植美奈子さん]
海に囲まれた島国に住み、古来から魚を食べてきた日本人にとって、海はとても身近な存在で、その恵みを多く享受してきた。 しかし、海に囲まれているからといって、海が現在どんな状況に置かれているかを正確に理解している人はどれくらいいるだろうか。この先も魚を食べ続けることはできるのだろうか。
海洋保全の先駆的な活動を続けてきた、一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局の理事長を務める井植美奈子さんによれば「海洋保全に関しては日本は周回遅れ」。その真意とは?
世界との差、20年以上。このままでは日本で魚は食べられなくなる⁉︎
「非常に深刻な問題です。地球全体の環境がひとつの大きな輪の中にいて、chain of lifeと言われますが、汚染や乱獲、気候変動などたくさんの問題で、そのつながっていた鎖を切ってしまったのが現在の地球であり海。それをリペアしていかないといけない。その壮大なプログラムに世界中がもっと真剣に取り組んでいく必要があるんです」(井植さん ※以下すべて)。
魚をはじめとした水産資源の枯渇、二酸化炭素(以下 CO2)による気温上昇による磯焼けなど海洋の環境、プラスチックごみの漂流など、私たちの生活習慣とも結びついている要因が複雑に絡んでいる。 「魚をよく食べる日本の皆さんが驚かれると思うのが、漁業についてです。日本での国産の魚の持続可能な供給は、危機に瀕していると言っても過言ではないでしょう。世界では乱獲を防ぎ、持続可能な水産資源のために一丸となっており、10年以上前から管理漁業が主流となっています。 しかし、日本ではそうではありませんでしたし、水産資源が枯渇しているという認識さえもありませんでした。日本で管理漁業がスタートしたのは2020年のことです」。 日本の管理漁業は、改正漁業法が2018年に法制化され2020年に施行された。
それ以前から水産資源が激減し、思うような漁獲量が得られなかったはずで、若い漁師ほど、この問題は実感を伴っていたことだ。 「世界で乱獲が問題視されたのは1980年代のこと。特に欧米で、彼らがよく食べているスケトウダラ漁が激化したことで枯渇し、その反省を踏まえて1990年代に管理漁業に向かっていったのです。そして国連で1995年に『責任ある漁業の行動規範』というものが採択されました。