運命のラスト5へ。残留争いに向き合う磐田の強み。渡邉りょうが強調した一体感「そういう姿勢が、永嗣さんが止めてくれたPKに繋がってるかも」
午前に磐田で練習、その足で大阪へ
ただ、磐田が舵を切ったのは、そうした戦術的なベクトルだけではない。監督やスタッフだけでなく、選手たちも残留という目標に、今は全員が矢印を向けていることが伝わる。 横内監督は現在のチーム状況について「選手が本当にこの現状をなんとか打破したいと。選手同士でも話してくれますし、それを選手だけで消化するんじゃなくて、スタッフにも共有してくれる。僕らは毎回、ミーティングで選手に提示して、共有する。今、そういうのをやれている。他がどうこうは分からないし、良いかどうかも分からないですけど、そうやって取り組めている。この現状は僕らのストロングじゃないかな」と説明する。 C大阪戦では、同クラブから期限付き移籍で磐田に来ているFW渡邉りょうはクラブ間の規定により、出場できないことは分かっていた。しかし、試合後には今夏に完全移籍で磐田に加入したジョルディ・クルークスとともに、相手ゴール裏のサポーターに挨拶へと向かう姿があった。その件について渡邉に聞くと、実は午前中に磐田でベンチ外のメンバーと一緒に練習をして、その足で大阪までやってきたという。 「もともと出られないのは分かってましたけど。練習も午前中だったので。終わってすぐ行けば現地で観られると思って、現地で観るという選択をしました」 もちろん、現地で夏まで一緒に活動していたC大阪の選手やスタッフに挨拶したい気持ちもあったはずだが、何より「今はジュビロのエンブレムを背負って戦っている」という言葉の通り、磐田のアウェーでの戦いを現場で見届けたい思いが強かったようだ。 「あと5試合、自分がこのチームに何をもたらせられるか」という渡邉は、磐田の残留争いを独自の目線で展望した。 「僕もこういう厳しい状況は初めてですけど、不思議と落ちる気がしない。それは過信とかじゃなくて、全員の顔を見ててもそうですし、誰一人諦めてないというのをホント...負けてるチームって何かあるじゃないですか。でも、このチームには前を向くパワーがありますし、次に進んでいく力があるチームだなって非常に感じている」 夏に加入した渡邉がチームに新たなエネルギーを注入したことは間違いないが、その渡邉も磐田の選手たちから刺激をもらって、さらなる成長に向けた日々を過ごしている。 苦しい状況で作り出す一体感は磐田の強みだという渡邉は「本当に、そういう姿勢がこの間、永嗣さんが止めてくれたPKに、もしかしたら繋がってるかもしれない」と語り、最後にこう結んだ。 「ジュビロ磐田、選手だけじゃなくてサポーターと一緒に、チーム一丸で頑張りたい」 ラスト5試合。磐田は神戸、G大阪、横浜、FC東京、鳥栖と対戦する。 取材・文●河治良幸