「患者よりカネもうけ」ナースが見た訪問看護会社のあきれた実態 障害者を「食い物」に
看護師が自宅に来てくれる「訪問看護」という医療サービスがある。病気で療養中の人や終末期の高齢者に医療処置をするイメージを思い浮かべる人が多いだろうか。だが、実は近年、精神障害や知的障害のある人を対象にする例が増えている。さらに、これも意外に思われるかもしれないが、訪問看護ステーションは医療法人以外でも運営でき、株式会社などによる開設が急増している。中には、利益優先で公的な報酬を不正・過剰に受け取っている事業者もいるという。勤務経験のある看護師たちがあきれたその実態とは。(共同通信=市川亨) 【写真】障害者ホーム大手「恵」の役員から社員(当時)に送られたLINEメッセージ
▽不正疑いの会社から転職したのに… 「もう嫌気が差しました」。愛知県内の看護師の女性はうんざりした様子で話す。 女性は以前、障害者向けグループホームの大手運営会社「恵」(東京)が運営する訪問看護ステーションで 働いていた。同社は主に精神、知的障害者を対象に各地で「ふわふわ」といった名前のホームを約100カ所運営。障害福祉や医療の報酬を不正に受け取っていた疑いや、食材費の過大徴収などが明らかになり、問題になっている会社だ。 女性や複数の元社員らによると、こんな手法が組織的に行われていたという。 (1)「健康管理」などの名目で、ホームの入居者に週3回の訪問看護をほぼ一律に契約させる (2)1人5分程度の短時間で多数の入居者を巡回 (3)早朝・夜間に訪問したように虚偽の記録を作り、診療報酬の加算を不正請求する 女性は「障害者を食い物にしている」と我慢できず、精神科の訪問看護を手がける別の会社に転職。ところが、再びがくぜんとした。
ここでも、自社のグループホーム入居者にほぼ一律に週3回の訪問看護を、必要ない人まで利用させていたからだ。「こっちの会社は、高い報酬を取るため複数人での訪問にする手法でした」。失望し、1カ月ほどで辞めた。 なお、「恵」はこれまでの取材に「国や自治体の調査を受けており、いずれかの段階で見解を明らかにしたい」としている。 ▽経営陣の口癖は「数字で判断せよ」 神奈川県内の男性看護師も愛知県の女性と似たような経験を持つ。各地で訪問看護ステーションを運営する大手の会社に2年前まで勤務。その会社では、会議資料に売り上げや利益率の目標がずらりと並び、目標として「確実に日本1にする」との文言が掲げられていた。男性はこう振り返る。 「経営陣の口癖は『数字で判断せよ』だった」 グループ会社が運営する有料老人ホームの入居者を、協力関係にある医師が「うつ病」「統合失調症」などと診断。診療報酬で「30分以上訪問」の区分を効率的に取るため、症状に関係なく会社が「1人当たり35分」と決め、「週3回が目標」と指示を出していた。「会社は利用者のことよりお金もうけが優先で、働けば働くほど違和感が募った」