「患者よりカネもうけ」ナースが見た訪問看護会社のあきれた実態 障害者を「食い物」に
▽参入ハードルは低い そもそも、訪問看護とはどんな仕組みになっているのだろうか。 まず、二つに大きく分かれる。医療保険が適用される場合と、介護保険適用の場合だ。 65歳以上の高齢者は、末期がんや難病などを除き、基本的に介護保険からお金が出る。医療的ケア児や現役世代は医療保険。精神科の訪問看護も医療保険が適用される。サービスを提供するのは主に訪問看護ステーションで、病院やクリニックもある。 訪問看護ステーションの参入ハードルは低い。医師などでなくても、法人を設立して看護師らを雇い、条件を満たせば事実上、誰でも開設できる。 高齢化などに伴い、利用者は年々増えていて、厚生労働省によると2023年現在、約122万人。そのうち医療保険の適用は約48万人で、主な傷病が「精神および行動の障害」という人が約21万人と半分近くを占める。10年間で7倍に増えた。 精神科の訪問看護ステーションは2022年までの5年間で倍増し、全国に約5300カ所。精神、知的障害者のケアには専門性が求められるが、事業者の中には「グループホームを巡回するだけ」「3年で年商8億円」などとうたい、広告でフランチャイズでの開業を促す例もある。
▽眉ひそめる医師 訪問看護を提供するには、医師の指示が必要なのだが、精神科の訪問看護を巡っては医師からも疑問の声が上がる。 愛知県内の精神科医は「グループホームと訪問看護を運営する事業者は大体、似たような傾向がある。医療法人でも、ホームと組んで同じようなことをしている例を知っている」と明かす。 「複数名での訪問指示をお願い致します」 神奈川県内の精神科医は昨年、そう書かれた文書を受け取った。差出人は、同県内でグループホームと訪問看護を運営する事業者。しかも、そのホーム入居者には既に訪問看護を始めたことになっていて、開始日がさかのぼって書かれていた。 この精神科医は「訪問看護を指示するかどうかは医師が判断することなのに、事業者のほうで勝手に決めていた。しかも複数人訪問は適さないケースで、おかしい」と眉をひそめる。 ▽利用者が不正に気付きにくい構造 通常、医療費には1~3割の自己負担がある。事業者が不正、過大に診療報酬を請求すれば、その分、利用者負担も増えるので、不審な点に気付きやすい。