米利下げ待ちあぐねる米国債投資家に朗報-買い戻しとQT減速の開始
(ブルームバーグ): 米金融当局の利下げ開始がいつになるのか待ちあぐねている債券投資家にとって、幾つかの歓迎すべき支援が近く寄せられることになる。
米財務省は29日から、発行済みで取引が比較的困難な証券を対象に2000年代初頭以来初となる一連の買い戻しを開始する。6月には米金融当局が量的引き締め(QT)として知られるバランスシート圧縮のペースについて、減速を始める予定だ。
底堅い米景気や予想よりも根強いインフレを背景に投資家が米利下げ見通しを大幅に見直す状況にあって、こうした二つの動きは米国債市場に支援材料となる。米国債市場では、ボラティリティーの高まりが落ち着きを示しており、米政府の取り組みは追い風となる。
JPモルガン・チェースの米金利戦略共同責任者、ジェイ・バリー氏は「買い戻しは助けになる心強い補強となるだろう」と指摘。また、米金融当局のQT減速について、翌日物資金調達市場における19年の危機再燃の懸念を和らげる「慎重なリスク管理として有益だ」との考えを示した。
米国債利回りは5月初め以降低下傾向にあり、ブルームバーグの指数で見ると月間ベースで1.4%のプラスのリターンの方向にある。
先週の米2年債利回りは4.95%前後と、今月のレンジである4.7-5.03%の上限寄りで取引を終えた。まちまちの内容の一部データや、金利をより長くより高く据え置く用意があるとの米金融当局者の一連の発言を反映した。
金融当局者の一部は、必要であれば追加利上げにも前向きな意向を示唆したものの、デリバティブ(金融派生商品)市場はそうした可能性は小さいと捉え、米国債利回りの上振れは抑えられた。
米スワップ市場が今年全体を通じて現時点で織り込む米利下げ幅は0.32ポイント前後と、0.25ポイント利下げが確実なのは1回だけとの市場の予想を反映している。
米金融当局が金利を据え置き、高金利が将来的に景気減速につながるのを待つ中で、債券市場はレンジ取引となり、債券ボラティリティーの指標であるICE・BofA・MOVE指数は22年2月以来の低水準に低下した。