世界最古記録 40億2千万年前の岩石が語りかける太古の地球の姿
地球は46億年前に誕生したといわれています。そして生命は約40億年前に生まれ、わたしたちホモ・サピエンスの種が初めて現れたのは、およそ20万年前。地球の長い歴史を1年に置き換えた場合、人類は12月31日午後11時半過ぎにようやく出現したと例えられるほど、わたしたち人間の歩みは実は、とても短いものです。 人類出現まで、地球はどのように環境を変え、生き物はどのように進化してきたのか―。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、世界の最新化石研究について報告します。 ----------
「岩石(の授業)なんて退屈だ」。「たくさんの岩石の種類を覚えて何の役にたつんですか?」 私がここアラバマ大学の大きな教室で(初期レベルの)地球史・生物史のクラスを教える時、2、3の生徒から決まって聞こえてくるうねり声にも似たつぶやき。このクラスは地質学専攻の者だけでなく、さまざまな学部の生徒が、サイエンスのクレジットを手に入れるために受講する。心理学、ビジネス、アートを勉強している生徒も含まれる。そして古生物学者としての私のささやかな挑戦は、こうした生徒に対して「岩石の魅力」やその「魔力」を説くことにある。その際私が心がけているコツというか大まかな心構えのようなものがいくつかある。 地質学者によって何百種類という岩石がこれまでに分類・判定されてきた。教師としての私が「どれだけの数の岩石を判定できるのか?」と問われると、すぐに天気か大学フットボール、または最近発見された新しい恐竜の話題へとすりかえるのはご愛嬌というものだろう。細かなものになると小数の限られたその道の専門家・研究者にしか見分けられないと開き直ることもできる。どうしてこんなにたくさんのタイプの岩石が分類され、更に研究される必要があるのだろうか?
岩石を調べることによって得られるメリットは実にさまざまだ。例えば経済的な利点がある(ある種のものは宝石のように高値で取引される)。建物に直接使われたり、セメントなどの材料によく使われるものもある(使う岩石の種類を間違えたら、例えば震災時等において大きな問題になりかねない)。ロッククライミングをする時は、どのような性質の岩肌にしがみついているのか知っておく必要があるので、地質学の知識は必須かもしれない。 岩石はいくつもの文化や宗教において「聖なるもの」としてあがめられてきた。日本各地の神社などにみられる聖なる岩」の存在は、「ホーリー・ロック」として世界各地で共有された存在のようだ。ギリシャ神話に登場する「メデューサ」の目を見たものは、瞬く間に石と化す。聖ペトロ(Saint Peter:?―67?)の名前は岩石学(Petrology)の語源にもなった。先にノーベル文学賞を歌手として初めて受賞したボブ・ディランは「Like a rolling stone」を独特のしわがれ声で歌う。困難苦難の連続―転がり続けてもへこたれない魂とダブって見える石の存在。岩石は永遠普遍のシンボルとして歴史上、世界中の各地域で共通の「神聖なる眼差し」を受け続けてきたようだ。