「生活費は貯金から切り崩す生活」「転職サイトは表向き応募可能も書類でほぼ全滅」50代男性が語る早期退職者のリアル
転職活動で経験した悔しさ
またゴトウさんはこれを機に、転職サイトに登録して転職活動を試みたが、ここでも厳しい現実に直面した。想像を絶するシニア世代の転職の難しさだ。 「50代の転職は厳しいですね。同時期に退職した同期が、大手転職サイトで転職先を見つけたとも聞きましたが、それはかなりレアなパターンかと思います。私を担当してくれた転職エージェントは、『見つけるのは相当難しい』としながらも、私の経験に見合った企業の応募を勧奨してくれました。しかしその通りに数社応募したところ、書類選考の時点でほとんど全滅、一社を除いて面接にまでもたどり着けませんでした。 少し悔しくなったので、ダメだとわかりながらも試しに、年齢を20代に変えてみたのですが、すると毎日のように企業側から面接のリクエストが送られてきました。雇用対策法で採用条件に年齢制限を加えることが禁止になっているので、表向きは応募可能になっていますが、裏では制限がかかっているのでしょうね」 やはり転職活動をする上では、年齢があまりにもダイレクトに難易度を押し上げているようだ。転職エージェントはゴトウさんの前職・マスコミ関係に合わせて放送、出版、広告、芸能プロダクションなどの求人を紹介していき、中にはAV女優のマネージャーというレアな職の紹介もあったという。 だがAV女優のマネージャー職を提案されるころには、ゴトウさんの心はどこかの企業の社員になるのではなく、個人事業主としてやっていく決意を固めていた。 そして現在では、元いた会社から前述の業務委託とは別の業務を請け負い、それを軸にこつこつ仕事をする日々を過ごしている。 ある程度は想定していたものの、退職後に待ち受けていた厳しい現実。 「もしも決断をやり直せるならばどうするのか?」ゴトウさんに質問を投げかけた。
個人事業主になってから思うこと
「安定した給料を得るために会社に残るか悩みどころですが、後輩が上司になるような状況でしたから、居心地は決していいものではありません。あのまま続けていても、仕事内容も決して楽しいものではなかったでしょう。 今は収入は減りましたが、個人事業主なので、ストレスのある上下関係や人事体系からは外れている分、気が楽です。また、これまでの会社の仕事と異なる挑戦をしようと思っている矢先であり、この先順調に進めば、新たな楽しみができる可能性もあるので、現時点では、会社を辞める決断をすると思います」 現在の日本では、多くの人が早期退職をするか否かの決断を迫られているだろう。ただ、どちらかが間違いでどちらかが正しいのではなく、そのどちらを選んでも正しいケースもある。最後にゴトウさんは、早期退職をするか悩んでいる人たちに向けて、アドバイスを送ってくれた。 「早期退職後、ほとんどの人は年収が下がると思います。住んでいる地域や家族構成によって違いがあるので、一概には言えませんが、年収500万円くらいでも、所得税、地方税、社会保険料などの負担が大きく、生活費は貯金から切り崩しになるおそれが高いです。これから退職する人は、その点ご留意ください」 取材・文/集英社オンライン編集部
集英社オンライン編集部