沖縄5市町村、米軍基地内の遺跡調査で連携 返還遅れ回避へ
米軍基地内にある遺跡などの調査のために基地の返還や跡地利用が遅れる事態を防ごうと、基地を抱える沖縄県内の5市町村が22日、防衛省沖縄防衛局を軸に、基地内の埋蔵文化財の保護と発掘調査で連携する基本協定を結んだ。文化財の調査を担う専門職員を互いに派遣し合う。 5市町村は米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市のほか、浦添市▽金武(きん)町▽北谷(ちゃたん)町▽北中城(きたなかぐすく)村――。文化財調査の技術や先進事例、基地内への立ち入りに向けた手続きに関する情報の共有、必要に応じた互いの専門職員の派遣などで連携する。 沖縄での基地返還は順調に進んでいない。日米両政府は2013年、米軍嘉手納基地(嘉手納町など)より南の6米軍基地計1048ヘクタールを将来的に返還する計画を公表した。だが、大半は県内の別の基地に機能を分散移転することが条件で、11年たった現在も実現したのは一部にとどまる。 今後、機能移転に伴う施設の建設工事では埋蔵文化財が新たに発見される事態も想定される。市町村の教育委員会が発掘調査や保存などにあたるが、考古学や歴史の専門知識と調査の実績を持つ専門職員は5市町村ともそれぞれ数人程度。人材不足で調査が長引き、基地の返還が遅れる可能性もある。 この日、沖縄防衛局であった協定の締結式後、渡久地(とぐち)政志・北谷町長は「人員不足の解消に期待している。学芸員ごとに精通している時代があり、情報共有が進むことで次世代に残せる(質の高い)文化財調査ができる」と語った。県のまとめによると、県内の米軍基地ではこれまでに304の遺跡が見つかっている。【比嘉洋】