「製造業」国内回帰…誘致活発、各自治体が生かす立地特性
栃木県/成長産業集積 取り組み加速
栃木県が首都圏企業の誘致へ7月に東京都内で開催した魅力発信セミナー。福田富一知事は栃木県の魅力として「アクセス性」「災害リスクの低さ」「安価で多様な産業団地」「優遇制度」を挙げた。優遇制度は2024年度に半導体や蓄電池など「特定重要物資」関連で強化し、成長産業集積の取り組みを加速している。 目玉施策の一つが立地企業の投下資産に対する助成制度の改定。不動産取得税課税標準額の3%としていた補助率を、特定重要物資関連は5%に引き上げた。半導体、蓄電池関連は補助上限額を30億円から70億円に増額。「全国トップクラスの限度額」(福田知事)で中核企業を招く。 補助金制度で既存立地企業の対応も促す。7月に特定重要物資関連のサプライチェーン強靱(きょうじん)化補助金と技術強化補助金の交付先を計7社決定した。各社が生産性向上や製品開発を進める。 一方、企業立地の受け皿となる産業団地は不足しているのが課題だ。県は21―25年度に累計200ヘクタール整備する目標だ。「みぶ中泉産業団地」の造成が進む壬生町の小菅一弥町長は「県内各地で産業団地開発が進んでいる。企業が自社の繁栄に適した立地場所を検討できる」と期待を寄せる。
北海道/次世代半導体・DCけん引
北海道では23年2月に次世代半導体の開発と製造を行うラピダス(東京都千代田区)が千歳市への進出を決め、24年5月には経産省と総務省による「データセンター中核拠点」に北海道と九州を位置付けた。ここから潮目が変わったとみる向きが多い。 工場立地の動向は「(北海道への進出企業数は)急に増えたわけではなく、コロナ禍前に戻りつつあるといった印象」(北海道産業振興課)だが、再生可能エネルギーのポテンシャルの高さ、冷涼な気候条件、グリーン・トランス・フォーメーション(GX)への金融資産運用特区対象地域となるなど、すべてが連動して企業誘致は進む。 ソフトバンクなどが北海道苫小牧市にデータセンター(DC)立地を決めたのは23年11月。将来的には敷地面積70万平方メートル、受電容量は300メガワット超と国内最大級の規模に拡大する計画。ラピダスが立地する千歳市が隣接し、連携も視野に入れやすい。 北海道と言えば元々は豊富な食資源を活用した食品工業の立地が多いが、ここにきてDCや半導体関連などが目立ってきた。こうした流れが進めば北海道の産業構造を変え得る可能性がある。