日本オープンは5月開催が理想!? “恐怖のラフ”生んだ事情と「開催時期変更案」【小川朗 ゴルフ現場主義!】
長雨の影響で刈止めのタイミングを見誤った
第89回「日本オープンゴルフ選手権」はアンダーパーがわずか2人というサバイバルゲームとなり、追いすがる木下稜介選手を今平周吾選手が最終ホールのバーディーで突き放し、4アンダーで優勝を飾りました。大会期間中、多くの選手が指摘したのは「経験したことがないほど厳しいラフ」。日本最高峰のトーナメントの裏で何が起きていたのでしょうか。そこには地球温暖化に伴う異常気象続きの日本で、10月にナショナルオープンを開催する上でのリスクがいくつも存在していました。 【写真】バレたら“永久追放”!? これがマスターズで“持ち込み厳禁”の品目です
※ ※ ※ 2022年大会を制した蝉川泰果ほか、多くの教え子を持つJGAナショナルチームのヘッドコーチ、ガレス・ジョーンズ氏に今大会のセッティングについて尋ねると、厳しい表情でこう言いました。「今回はラフがシビアになりすぎた。パー5でティーショットを3番アイアン、セカンドショットも3番アイアン、3打目を9番アイアンで攻めることになっているのは、どうかと思うよ」。 今大会で8位に食い込んだ石川遼選手も初日のホールアウト後、「これだけ600yのパー5のティーイングエリアにターフがいっぱいあるのは珍しいことですし、普通は問答無用でドライバーみたいな感じですけど、結構な数の選手がドライバー以外、3番ウッド以下という形で」ティーショットを選択していたことを指摘していました。 最終日に17番パー3のバンカーショットを直接叩き込むバーディーで今平選手を追い詰めた木下稜介選手も「今回のラフがこれまでで一番厳しかった」と告白していました。何故ここまで厳しくなったのでしょうか。それにはもちろん、やむを得ない事情がありました。 今大会のコースセッティングコミッティのチェアマンを務める日本ゴルフ協会(JGA)の山中博史氏が、こう明かします。「僕らも正直言うと、ここまでのラフは予定してなかったんです。最後の刈り止めが9月の確か中旬過ぎだったのかな。野芝のラフって、大体9月の後半になると成長が止まるじゃないですか。ところが残暑と長雨が続いて、なかなかモア(芝刈り用の機械)が思ったように入れなかったんです。本当はもう1回か2回、頭を飛ばして120から150ミリというリクエストしていたんですけど、実際にはもう200ミリ近くなってしまった。我々の反省点としては、この刈止めのタイミングを見誤ってしまったという部分はあると思います」。 JGAが公式会見の際に出した資料でも、フェアウエイが刈高10ミリ、ファーストカットが25ミリ、ラフは100ミリから150ミリと明記されていました。50ミリの誤差は、通常のセッティングでも最も難しいセッティングとなる日本オープンが、想定外ともいえる難度まで上がってしまったということ。ジョーンズ氏の指摘の根拠は、ここにあったというわけです。