欧米・オーストラリアの金持ち観光客の満足度を左右する、“優秀ガイド”の重要さ
円安とコロナ禍明けを受け、拡大を続けるインバウンド市場。今後の課題とされるのが「富裕層の取り込み」だ。日本文化への関心が高いと言われる欧米・オーストラリアの富裕層は、日本に何を求め、どんな背景から訪日するのか。インバウンドコンサルティングや旅行事業を手掛けるBOJ社CEOの野口貴裕から話を聞いた。
多様化するニーズ、目的地は地方へ
──欧米とオーストラリア人富裕層の訪日旅行は、どのように変化していますか? 野口 当社では、旅行で1人1日1500ドル(約22万円)以上を支出する方を「富裕層」として定義し、うち、欧米およびオーストラリアからの訪日観光客を主要なターゲットとしています。 コロナ禍前は子育てを終えた60~70代のご夫婦のお客様がメインでした。しかし、コロナ禍が明けてからは子や孫といった親族を巻き込んだ複数人での旅行が多くなりました。また、以前は東京・京都といった大都市のみの旅行が大半でしたが、現在はそれら有名観光地への訪問が1泊ほど減り、かわりに、個々人のこだわりや趣味などに応じた多様な目的地に宿泊する方が増えました。 これらの背景には、コロナ禍のステイホームを機に家族と過ごす時間が増えたこと、個人の趣味趣向に沿った情報収集をする時間が持てたことが関係しているように思います。
「特別感」あるコンテンツを
──欧米およびオーストラリア人富裕層向けに旅行プランや体験コンテンツを設計する場合、どのようなことに気を付けるべきですか? 野口 特別感とプライベート感が味わえる仕組みを作ることです。 たとえば、お寿司づくり体験を実施するのなら、ミシュランガイドに選出された寿司屋の職人が店を貸切って指導してくれたり、茶道体験やお寺での瞑想体験については、ラグジュアリーかつ一般非公開な場所で、その道を究めた特別な方から手ほどきを受けられるなど、希少かつオーダーメイドなコンテンツがこれに当たります。 富裕層の多くは各国で多くの旅行コンテンツを経験済みで、知的好奇心の旺盛な方が多いです。大人数や流れ作業のなかで実施されるような一般向けでありきたりな内容では、彼らのニーズを満たすことは難しいように思います。