UNRWA局長、活動禁止法に危機感 「施行されぬよう、声上げて」
パレスチナ難民への人道支援を担う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏・保健局長が28日、東京都内で記者会見を開いた。イスラエル国会が10月末、国内でのUNRWAの活動を禁止する法案を可決したことについて「(パレスチナ自治区)ガザへの支援が止まってしまう。法律が施行されないよう、日本も声を上げてほしい」と訴えた。 【写真】ポリオワクチン接種を受ける子ども=2024年9月7日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニス近郊、清田明宏さん提供 UNRWAは1949年に設立され、ガザやヨルダン川西岸、レバノンなどのパレスチナ難民に医療や教育といった人道支援を続けてきた。一方、イスラエル側は、ガザ内部のUNRWAの施設をイスラム組織ハマスが使っているとして、攻撃を繰り返している。イスラエル国会が可決したUNRWAの活動を禁じる法案は、来年1月にも施行される見通しだ。 清田局長は会見で、「UNRWAは(パレスチナ難民への)支援の中心だ。代わりになる組織はない」と、新法への危機感を示した。UNRWAは、今年9月に世界保健機関(WHO)などと協力して約56万人のガザの子どもたちへのポリオワクチン接種を実施し、10月以降に2回目の接種も終えた。清田局長によると、ワクチン接種を行ったスタッフの約4割はUNRWA職員。昨年10月の戦闘開始以降も、臨時診療所を運営しながら、ガザの一次医療の5割ほどをUNRWAが担ってきたという。 法律が施行されれば、ガザやヨルダン川西岸でUNRWA職員の移動が制限されたり、食料や医薬品の輸送ができなくなったりする恐れがあるという。清田局長は「UNRWAの活動は国連総会の決議に基づいており、1カ国の意思で変えられることがあってはならない」と述べた。(加藤あず佐)
朝日新聞社