早田ひなの真骨頂。盤石の仕上がりを見せ、ベスト4進出。平野美宇は堂々のベスト8。2人の激闘を紐解く
大躍進の北朝鮮の筆頭格VS完成形となった早田ひな
ベスト4をかけた戦いは、今大会大躍進の北朝鮮の筆頭格、ビョン・ソンギョン。混合ダブルスで北朝鮮に負けているだけに、早田にとって「絶対に負けられない戦い」だ。 第1ゲーム。5-2に突き放す場面で、いきなり強烈なバックドライブがストレートに決まった。早田の調子のバロメーターの一つがバックドライブ。これが決まると早田は強い。台上ではキュッと音が出るようなストップも決まった。11-5で、このゲームを先取する。 第2ゲームは、ビョンも食い下がり、一進一退の攻防に。9-5へ突き放す場面で、早田が絶叫。その後は、回り込みシュートドライブと、コースをまったく読ませない“散らせ方”を展開。ここも11-5で、取り切る。 第3ゲーム。まずは、ビョンの豪快な回り込みドライブから開始。まるで、ひと昔前のペンホルダー男子選手のような一瞬で大きく回り込む姿だ。2-2とする場面では、早田が目のもとまらぬ打点からストレートへ打ち抜く印象的な一撃を放つ。4-7とリードされた場面でも、また同じストレートドライブ。 今までの女子卓球において、世界でも類を見ない「リーチの長さ+打点の速さのミックス」のストレートドライブは、本当に言葉で言い表せないほどの攻撃だ。7-7に追いつく場面では、また絶叫。しかし、その早田と真正面から戦えてしまう、ビョンもまた、すごい。ジュースに持ち込むと、エッジンインの幸運も味方に、最後はサイド切るバックドライブをクロスに放ちビョンが勝利。
早田ひなの真骨頂。激闘はまだ続く
第4ゲーム。前陣から角度を突く一球は、ビョンの得点に。逆に、両ハンドで、クロスを交えて、左右に大きなラリーを展開すると、早田の得点に。この攻防が続く。 ビョンは台上もうまい。フォアフリックも一発抜きでくる破壊力だ。それでも最後は精度の差が出て、11-8で、早田が勝ち切った。驚くのは、ここまでの激闘の中でも、早田が試合中も笑顔を見せていることだ。余裕とも違う。虚勢とも違う。本当に楽しそうな笑顔だ。エースの重圧を物ともせず、オリンピックを楽しみ切っている姿が、とても印象的だ。 第5ゲーム。このゲームも激しい打ち合いに。8-9とリードされる場面では、バックミートにシュートをかけて9-9に。それでも振り切られてしまい、このゲームも落とした。ビョンはしぶとい。 第6ゲーム。台上の攻防から開始。ここで、早田の全体的な精度が戻ってくる。フォアの連打もさえわたる状態。しかし、このあたりではビョンが大きなラリーに対応してしまう。終わってみれば11-4でビョンが勝ち切った。 そして迎えた、第7ゲーム。1ポイント目から、絶叫の早田。ここから動きにキレが戻った。両ハンドの角度も最高の形で決まり出す。真骨頂だ。そして、リーチの長さを存分に生かし、縦横無尽に動き回った。最後も両ハンドがミスなく決まり、勝利を決めた。 壮絶な試合だった。ビョン・ソンギョンも本当によく鍛え抜かれており、すべてのプレーから強さばかりを感じた一戦となった。大きな大会があるたびに痛感するが、世界には、中国以外にもまだまだ強豪が潜んでいる。これもまたオリンピックの醍醐味だろう。 しかし、早田の激闘はまだ続く。そう、早田の夢、打倒中国へと。そして団体戦へと。 熾烈な代表選考レースの末に辿りついた日本代表選手たちが躍動するパリ五輪の卓球が、今まさに、熱く燃えている。 <了>
文=本島修司