早田ひなの真骨頂。盤石の仕上がりを見せ、ベスト4進出。平野美宇は堂々のベスト8。2人の激闘を紐解く
“強いメンタル”を手にした平野VS韓国の新たな天才少女
準々決勝。相手は韓国の20歳、申裕斌(シン・ユビン)。幼少期から韓国では「新たな天才卓球少女」と称されてきた選手だ。 このベスト4を決める戦いは、文字通り「死闘」となった。 序盤は劣勢。3ゲームを連取され、シンの強さが目立つ展開に。特に、平野にとって得意なはずのバックミートの打ち合いで、角度の強烈さで打ち負ける姿は、平野の能力をもってしても勝てないか……と驚かされるほどの強さだった。 しかし、そこから奇跡的な平野の逆襲劇が始まる。シンの、小さなウィークポイントを見つけ、フォア側へ振る一撃を、何度も丁寧に放った。第7ゲーム。8-8からは、フォア側ではなく、華麗にミドル打ち抜きが決まった。 9-8。大逆転勝利は、すぐそこまで見えていたが……。 最後はシンに振り切られて、平野は準々決勝で姿を消した。しかし、明らかに世界屈指の強豪であった、このシン・ユビンとここまでの死闘を演じた平野の姿には、会場中のみならず、日本中が拍手を送ったことだろう。
盤石の仕上がりを見せるエース・早田ひな
一方、早田ひなは盤石の強さを見せている。前評判通りのベスト4進出を果たした。 だが、初日に行われた、張本智和との混合ダブルスでは北朝鮮ペアに1回戦で敗れる波乱があった。この敗戦についてはまだ気持ちの整理ができていないはずだ。 気持ちを切り替えて――。言葉にすると簡単だが、これまでの努力の日々、そして何より「最も金メダルの可能性がある」と言われた種目での1回戦敗退という衝撃の大きさは、周囲の声の大きさより、当の本人たちにとって言葉に表わせないほどの悔しい出来事だったはず。 それでも、1、2回戦、ともにストレート勝ちを決めた早田。3回戦では、ジアナン・ユアンと対戦。相手は地元フランスの選手ということもあり、“アウエィ感”も漂っていた。 試合は予想通りのフランス応援団の、大歓声。8-10とリードを許し、苦しい展開からとなったが、そこから逆転で第1ゲームを勝ち切ると、あとは“早田劇場”の開幕だった。 リーチの長さを生かした、“しなる”様にして放つ両ハンドのドライブが、台の角や、サイドを切る素晴らしい角度で決まり、圧倒。気がつけばこの試合も、4―0で勝利となった。 これにより、4-0を3連発で、1ゲームも落とさずに準々決勝へ駒を進めた。