友達が同僚に?広がる「リファラル採用」とは◆転職理由は「口コミ」、新卒獲得も #令和に働く
◇新卒が新卒を勧誘
一般にリファラル採用では、友人のスキルや経験が推薦の判断材料になるため、中途人材を対象にした募集が多い。ただ、人手不足で「売り手市場」が続く中、新卒の募集にも口コミを活用する企業がある。 高知銀行は21年から、既に内々定が決まった学生に就職活動中の知人を紹介するよう依頼している。選考は、学生から紹介があるたびに実施しており、25年度の入行予定者54人のうち、4人がリファラル採用だった。 思わぬ成果もあった。紹介を依頼した学生の内定辞退率が低下したという。採用担当の西村喬典さんは「紹介を依頼するため、入行前に行員との懇談会やワークショップを開催した。それらが、学生の気持ちを銀行につなぎ留めたり、入行後の不安を取り除いたりすることなったのではないか」と分析する。 ◇デメリット、対策は? 従来、「コネ採用」には身内をひいきしたり、社内で派閥をつくったりとネガティブなイメージがあった。リファラル採用には、そうしたデメリットはないのだろうか。企業の人材戦略に詳しいニッセイ基礎研究所の小原一隆主任研究員に話を聞いた。 ―リファラル採用の課題は。 職場から人材の多様性が失われる場合もある。社員の友人が採用候補者となるので、性別やキャリアが紹介者と似た人物が集まりやすくなる。そうした職場では、出てくる発想も似たり寄ったりで、ビジネスのイノベーションは生まれづらい。 対策として、採用候補者の属性が偏らないよう、一人の従業員が紹介できる友人の数を制限したり、少数者を一定数採用するクオータ制のようなルールを設けたりすることが考えられる。 ―今後、リファラル採用は増えていくのか。 増えていくとみている。特定の職務に限定した「ジョブ型雇用」の増加とも相まって、即戦力になる人材の奪い合いが激しくなっている。その上、労働人口の減少で人材の獲得はますます難しくなるため、採用経路の一つとして定着するのではないか。 ―企業に求められることは。 そもそも日本の会社員は、勤め先への「エンゲージメント(愛着)」が他国より低いと言われており、こうした環境では従業員が会社のために一肌脱いで、わざわざ友人を紹介しようとは思う人は少ないだろう。 エンゲージメントが高い企業には「働きやすい環境」と「やりがいのある仕事」がある。例えば、柔軟な働き方ができる体制を整備したり、スキルアップできる制度を設けたりして、他人に紹介できる就業環境にする必要がある。 この記事は、時事通信社とYahoo!ニュースの共同連携企画です。