「水産資源を次世代に」天皇陛下の思いと42回目の“海づくり大会”【皇室 a Moment】
1960年、ご夫妻がアメリカを訪問された折に、現地で贈られ、上皇さまは持ち帰って水産庁に寄贈されました。それが滋賀県水産試験場に分けられ、何らかの事情で生態系を脅かす存在になっていたんですね。上皇さまはそのことに「心を痛めている」と反省を言われた訳で、当時、取材していた私もびっくりして、読売の本社に急ぎ原稿を送ったことを覚えています。
「川」で初めて行われたのは、2010年の岐阜県です。「清流がつなぐ未来の海づくり」というテーマが掲げられ、「水を守る」「地球環境を守る」という新しい視点が加えられました。岐阜県は、長良川、木曽川、揖斐川など太平洋に注ぐ「木曽三川」が有名です。長良川河畔で行われた放流行事では、日本の伝統漁法で、宮中の「御用」として守られている「鵜飼い」が披露されました。 上皇さまは「アユ」、上皇后さまは「アジメドジョウ」などを放流し、日本海に注ぐ川に放流してもらうために「ヤマメ」などの稚魚も関係者に手渡されました。
2014年に奈良県で行われた大会は、吉野川の源流のダム湖が放流会場でした。上皇ご夫妻は34艘のカヌーの歓迎を受け、「アマゴ」と「アユ」を放流されました。
■東日本大震災の被災地との交流も
――大会の対象というのは、海だけではなく、湖や川、そして環境保護にまで広がっていったんですね。 国民みなに関わる大会になってきたんですね。
大会をきっかけに、その後の東日本大震災の被災地との交流も生まれています。1997年の開催地は岩手県大槌町でした。この時、上皇ご夫妻は海辺のホテルに宿泊し、部屋から、浜辺に咲くハマギクの花を目にとめられました。
翌朝、近くまで散策してご覧になり、この花を気に入られたそうです。その後、町から種が贈られ、お住まいの御所で育てられました。
震災の年の2011年、上皇后さまの誕生日に公開された映像にそのハマギクが映っていました。岩手の被災者たちは喜び、花言葉が「逆境に立ち向かう」だったことから、ハマギクは“復興の象徴”になりました。 5年後の2016年、上皇ご夫妻は再び大槌町を訪問されます。被災後、再建されて「三陸花ホテルはまぎく」と名前を変えたホテルを訪ね、ハマギクの花と共に復興の歩みを進める被災地をご覧になりました。