盗まれた『オズの魔法使い』の「ルビーの靴」が42億円で落札! 映画の小道具の史上最高額に
映画『オズの魔法使い』(1939)で主人公のドロシーを演じた俳優ジュディ・ガーランドが履いた「ルビーの靴」。この映画の象徴的なアイテムが12月6日、アメリカ・テキサス州に拠点を置くヘリテージ・オークションズが開催したオークションに出品された。 【写真】世界のトップコレクターが買った作品47選 ルビーの靴の予想落札価格は300万ドル(約4億5000万円)だった。オークションが始まると電話による激しい入札合戦となり、わずか3分で1000万ドル(約15億1400万円)にまで跳ね上がった。15分間のドラマの末、匿名の電話入札者が2800万ドル(約42億4000万円)、手数料込みで3250万ドル(約49億円)という記録的な高値で競り落とした。落札が決まるとオークショニアは、映画関連の品のオークション最高額はマリリン・モンローが『七年目の浮気』(1955)で着用した象徴的な白いドレスの552万ドル(現在の為替で約8億3600万円)であり、それを超えたことを参加者に報告した。 『オズの魔法使い』でジュディ・ガーランドが履いたルビーの靴は計4足現存しているが、中でも今回の一足が最も有名だ。もともとコレクターのマイケル・ショーが所有しており、2005年にミネソタ州のジュディ・ガーランド博物館に貸し出していたが、泥棒がガラスケースを壊して靴を盗んだ。その後行方が分からなくなっていたが、10年後にFBIが発見。一躍ニュースになった。 盗んだのは、77歳の窃盗の常習犯テリー・ジョン・マーティン。彼は、窃盗仲間からルビーの靴には本物の宝石が使われていると聞いて犯行に及んだが、実際靴にはめられていたのはガラス製だった。がっかりしたマーティンは靴を仲間にあげた。ルビーの靴にまつわる歴史を題材にした『The Ruby Slippers of Oz』の著者であるリース・トーマスは同著で、「この靴は(作中でドロシーが案山子や木こりなどの仲間と出会った)黄色いレンガ道よりも多くの紆余曲折があった」と振り返っている。 今回のオークションで最も落胆したのは、ジュディ・ガーランド博物館だろう。同館はルビーの靴を買い戻そうと自身のホームページで募金を募り、ミネソタ州議会から10万ドル(約1600万円)の支援を受け取っていたのだ。同館のエグゼクティブ・ディレクターであるジャニー・ハイツは、ニューヨーク・タイムスの取材に対して、オークションの「かなり早い段階」で、落札できないことがわかったと語った。そしてこう続けた。 「私たちのルビーの靴の物語の1章に幕が下りたようなものですが、それでいいのです。あの金額で落札されたということは、『オズの魔法使い』が世界にとってどれほど重要な作品であるかを証明していると思います」 同館はこのオークションで、ドロシーのルビーの靴を奪おうとした邪悪な魔女の手が電撃に打たれる場面を描いた絵画を2万ドル(約302万円)で購入した。州議会からの資金はオークションに参加するために使った少額を差し引いて返却し、ホームページからの寄付金は、オズの魔法使いをテーマにしたミニゴルフコースや、その他の展示に充てる予定だという。
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