なぜJFAは”パワハラ認定”のサガン鳥栖・金明輝前監督と東京ヴェルディ・永井秀樹前監督に異例の厳罰処分を下したのか
ファン・サポーターに対してコメントの後半部分で誓った、Jクラブで再び指揮を執る姿を見せる可能性が完全に消滅したわけではない。そのためには、S級資格を再取得しなければいけない。しかし、制度上では最短でも2年の時間を要する。 JFAが公認・発行する指導者ライセンスのなかで、S級は言うまでもなく最上位に位置する。Jリーガーの場合、C級からB級、A級ジェネラルと指導者ライセンスを順次取得していって、初めてS級講習の受講資格を得られる。 カリキュラムは1年間におよび、しかも2022年度の受講メンバーはすでに決まっている。金氏が受講できるのは早くても来年となり、何よりもその前にJFAから参加を義務づけられた研修会や社会奉仕活動における実績が認められなければいけない。 Jリーグとしての処分を科した際に、村井満チェアマン(62)は限られた戦力を駆使して鳥栖をJ1リーグ戦で上位に導いた金氏に「非常に有能で、将来のある監督だと思っている」と言及した上で、サッカー界全体に対してこんな言葉を紡いでいた。 「ハラスメント問題に関して社会全体が重大な関心を持っているにもかかわらず、我々が社会についていけていないと感じている。社会規範は時代とともに変わっていくことを理解しながら、理由のいかんによらず、ハラスメントや暴言はいっさい許されないとJリーグとして確認したい。(金氏は)この事象をしっかり乗り越えて、反省すべきことを反省していただきながら、未来へ向けて再起してもらいたい」 JFAが下した今回の極めて重い処分も、JFA副会長を兼ねる村井チェアマンが猛省を促し、その上で金氏の再起へ寄せた期待の延長線上にあると言っていい。 現状で金氏が持つA級ジェネラルは、年齢制限が設けられていない第1種登録チームのなかで、若手選手を中心としたサテライトチームやアマチュアの最高位となるJFLチームの監督、あるいはJクラブのトップチームコーチを務められる。 研修会や社会奉仕活動を介して反省の意を示し、その上でトップカテゴリーの監督として再出発を期す将来を思い描いているのであれば――これから金氏が選び、そして進んでいく道に、胸中に抱く覚悟と決意が反映されていくことになる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)