なぜJFAは”パワハラ認定”のサガン鳥栖・金明輝前監督と東京ヴェルディ・永井秀樹前監督に異例の厳罰処分を下したのか
調査チームは約3ヶ月間にわたり、選手を含めた鳥栖の関係者90人に対してのべ100回のヒアリングを実施。その結果として、選手の胸ぐらをつかんで押し倒す、髪の毛を引っ張る、平手打ちをする、蹴るといった有形力の行使が認定された。 さらに選手たちに対するさまざまな暴言も、ほぼすべてが「指導においてまったく必要がなく、かつ悪質なもの」と位置づけられた。一連の行為はサガン鳥栖U-18監督に就任した2016シーズン以降で確認されたもので、トップチームの選手よりも高校生へのパワハラ行為が多かったと結論づけた調査チームは、さらにこう言及している。 「高校生に対する暴力は、教育的見地からも強い非難に値する」 調査報告書には、U-18に所属していた選手のこんな言葉も記されていた。 「叩かれたとしても、当たり前のことだと思っていた」 金氏による有形力の行使や暴言が、常態化していた状況を物語る証言。さらに鳥栖が独自で行った第三者委員会によるヒアリング調査前には、チーム関係者へ電話を入れた金氏が、自らに不利な証言をしないように働きかけた事実も判明した。 金氏は12月20日に退任していたが、Jリーグは8試合の公式戦出場資格停止処分を決定。監督ではない金氏は今シーズンの開幕から鳥栖の公式戦8試合に相当する期間、具体的には今月26日のYBCルヴァンカップまでが処分の対象期間となった。 さらに金氏を巡るさまざまな報道が飛び交いながら、調査を怠った鳥栖に対しても懲罰処分として300万円の罰金とけん責がそれぞれ科されていた。 兵庫県伊丹市で生まれ育った金氏は、初芝橋本高(和歌山)を卒業後の2000シーズンにジェフ市原(現ジェフ千葉)へ加入。JFLや地域リーグ、韓国Kリーグでディフェンダーとしてプレーし、J2だった鳥栖に移籍した2011シーズン限りで引退した。 翌2012年からは鳥栖のスクールコーチとして指導者の道を歩み始め、育成年代のコーチや監督を務めた後の2018年10月にトップチームの監督に就任。その後はトップチームのコーチに就くも、翌2019年5月から再び監督を務めてきた。 昨シーズンは4年ぶりのひと桁となる7位でフィニッシュ。しかし、夏場の練習中に選手の上半身を手で押さえた状態で足を払い、グラウンド上に押し倒した問題行為が発覚。クラブ側より夏場に3試合の公式戦指揮資格停止と練習参加禁止の処分が科された。 退任にあたって金氏は、11年間も所属してきた鳥栖への感謝の思いを込めながら、公式ウェブサイトを通じてこんなコメントを発表している。 「今シーズン、私の指導者としての未熟さゆえに、たくさんの方にご迷惑、ご心配をおかけしたことをこの場をお借りしてお詫び申し上げます。またいつか成長した姿をお見せできる日がくることを楽しみにしております」(原文ママ)