自営業やフリーランスが知っておくべき「予定納税」と「定額減税」の関係 手続きはどうする?
6月から順次スタートした「定額減税」。物価高騰により国民の生活が苦しくなっていることを受けて、1人あたり所得税から3万円、住民税から1万円の合計4万円が減額されるという措置だ。 住民税の減税は自治体が対応するため特に手続きは必要ない。一方所得税の減税は、会社員は原則手続きは不要だが、個人事業主の場合は対応が異なる。 個人事業主が所得税の定額減税を受けるには、以下の2つのいずれかで行う必要がある。 (1)令和6年分の確定申告を行う際に定額減税を受ける (2)令和6年分の「予定納税」で定額減税を受ける (2)の「予定納税」とは、前年の所得税額が15万円以上の場合に、前年の所得税金額を元に計算し、翌年分の所得税を先払いするという制度だ。対象者には、定額減税分が控除されたあとの金額で税務署から通知が届くので、2回(7月と11月)に分けて納付を行う必要がある。なお、予定納税は個人事業主だけでなく、会社員で副業があり確定申告をしている人も対象となる。 予定納税がある人は、減税分が引かれた所得税を納付すれば完了、と思いきや、人によっては手続きが必要になることもあるという。どういうことだろうか。檜垣昌幸税理士に聞いた。 ● 同一生計の配偶者や扶養家族がいる場合は「減額申請」が必要 ーー予定納税の対象者で、定額減税を受けるために別途手続きが必要なのはどのようなケースでしょうか。 「予定納税の通知が届いた時点では、本人分のみの<定額減税額3万円が差し引かれた予定納税額>が記載された納付書が届きます。同一生計の配偶者や扶養親族がおり、その人数分の定額減税も予定納税額に反映したいということであれば、『予定納税額の7月(11月)減額申請書』の提出が必要です。 通常『予定納税額の7月(11月)減額申請書』(以下、予定納税額の減額申請書)は、その年の所得金額の見積額や所得から差し引かれる金額を記載の上で、税額を計算するという手間のかかる計算をする必要があります。しかし、定額減税の金額だけを追加したい場合は簡易的な記載方法が認められているので、手間のかかる計算をする必要はありません(※)。 注意点として、7月1日から7月31日の期間内に予定納税額の減額申請書を提出しなければ、当初通知された予定納税額をそのまま支払う必要があります。1日でも遅れると配偶者等の定額減額を受けられませんので、必ず期間内に返信用封筒を利用し、提出してください。 仮に予定納税で減額しきれない金額の定額減税がある場合は、予定納税額がゼロ円となるように減額申請を行ってください。なお、通知された予定納税の額が定額減税の合計額より少ないからといって、差額が還付されるということはありませんので、変に期待しないようにしてください」 ーー『予定納税額の減額申請』というと、本来であれば、本年度の所得税額が昨年より少なくなる場合で行う手続きかと存じます。「本年度の所得税額が昨年より少なくなる」という方は、どのように定額減税の手続きをすれば良いのでしょうか? 「所得税額が昨年よりも少なくなると見込まれ、予定納税額の減額を求めるケースでも、同様に予定納税額の減額申請書を提出する必要があるため、そこに定額減税の金額を記入します。 定額減税の金額を考慮しないで減額申請書を提出すると、定額減税の恩恵を予定納税の時点で受けることができませんので注意してください。もちろん、確定申告の際に定額減税を正確に記載すれば、確定申告の際に支払う所得税について定額減税の恩恵を受けることは可能です」 参考:令和6年分 所得税の予定納税における定額減税の取扱いについて(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/pdf/0024005-066.pdf) 【取材協力税理士】 檜垣昌幸(ひがき まさゆき)税理士 2005年大原簿記専門学校を卒業後、経営コンサルティング会社へ就職。独立したのちに自動車販売会社での取締役着任を経て、税理士事務所に就職しサラリーマン大家さんの税務を多く担当。その後に独立し年商3000万未満のスモールビジネスに特化した事務所として活動している。 事務所名 : おまかせTAX 檜垣昌幸税理士事務所 事務所URL: https://omakasetax.co.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部