楽天モバイルが手を伸ばす「お試し割」というパンドラの箱 通信業界は嵐の前の静けさ
総務省の調査では、消費者が通信事業者の乗り換えを検討するに当たり、「通信品質に不安がある」といったサービス面の懸念が乗り換えをためらう要因になっている。2020年にキャリア事業に本格参入した楽天は、「安いが、つながりにくい」といったイメージを持たれがちだった。 しかし直近では、通信品質の改善を着実に進めている。品質を評価する第三者機関、Opensignal社が2024年10月に出したレポートでは、通信規格5Gの上り・下りの速度など、全18項目のうち3項目で業界首位を獲得。エリアはまだ局所的だが、つながりやすい電波「プラチナバンド」の展開も開始した。ユーザーが気軽に品質を試せる機会を提供できれば、契約拡大の起爆剤になる可能性がある。
■「お試し割引」を総務省が認めた理由 業界全体でみると、今回の制度改正は、「攻める」立場の楽天にとって、明らかに有利に働く施策といえる。それだけに、競合キャリアなどは総務省に対し、「顧客獲得競争を激化させないか継続検証が必要」「見直しは必要十分な最低限の範囲にとどめることが重要」との要望を出していた。 料金の割引を狙って消費者が次々とキャリアを乗り換える「ホッピング」と呼ばれる行為が起こる懸念もあり、有識者からは「割引期間を最長6カ月とするのは長すぎでは」との指摘が上がったが、ある競合キャリアの関係者は「最終的に、楽天側の意向が押し通される形になった」と振り返る。なぜ、総務省は思い切った制度見直しに踏み切ったのか。
総務省の報告書では、「携帯電話市場の寡占状態は継続し、通信料金の消費者物価指数が1年前と比べ10%以上上昇する状況に鑑みれば、事業者間のさらなる競争促進が重要」と指摘している。楽天の契約が急拡大中とはいえども、通信業界では依然、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社のシェアが圧倒的だ。 総務省によると、携帯電話の契約数シェアは2024年6月時点で「大手3社」が8割超を占め、キャリアから回線を借りて事業運営する格安スマホ業者(MVNO)が計15.2%、楽天は3%にとどまる。