ロシアは核実験を再開するのか?CTBTから離脱、プーチン大統領は「準備を万全とする」よう命じた 「シベリアでやれ」「米国に分からせろ」相次ぐ強硬発言、核拡散防止体制に危機
ロシアのプーチン大統領が11月2日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法律に署名、同国の事実上のCTBT離脱が決まった。ウクライナ侵攻を巡る西側との対立が深まる中、ロシアが国際的な核軍縮の求めに反して核実験に踏み切るのではとの懸念が強まっている。(共同通信=太田清) ロシアが核攻撃に踏み切ったらアメリカはどこに報復するか? 米政権内で行われていた机上演習の衝撃的な中身
▽大統領「準備万全に」 ロシアのCTBT離脱の動きはかねてあった。2月21日に行われた毎年恒例のロシア上院に対する年次報告演説で、プーチン大統領は、米国の核兵器について「核弾頭の性能を保証する期限が切れつつあることを知っているし、新たな核兵器開発が行われ、核実験の可能性を検討していることも分かっている」とした上で、国防省と国営原子力企業ロスアトムに対し、「核実験の準備を万全とする」よう命じたことを明らかにした。 プーチン氏の言う「新たな核兵器」とは、米政権が2021会計年度(20年10月~21年9月)の予算教書に盛り込み、開発計画が明らかになった潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載予定の新型核弾頭「W93」などを指すとみられる。 4月11日には外務省のザハロワ報道局長が米西部ネバダの核実験場で「実験準備を進める決定がなされた」として、米国を非難。ロシアでは既に2018年ごろから米国が同実験場で準備を進めているとの懸念が表明されてきており、米国の核実験再開を警戒していた。
8月には、プーチン氏の命を受けたかのように、ショイグ国防相とロスアトムのリハチョフ社長がヘリコプターで、かつて核実験が行われた北極圏のノバヤゼムリャ島実験場を上空から視察した。 ▽核の最後通告 10月2日には、ウクライナ侵攻を巡り、核兵器使用を主張するなど過激な発言を繰り返している国営テレビ「RT」のマルガリータ・シモニャン編集長が自身の番組で、シベリア上空で核実験を行い、ウクライナ支援を続ける西側に「核の最後通告を突き付けるべき」と発言。 ペスコフ大統領報道官はすぐさま、「実験の意向はない」とシモニャン氏の発言を否定したものの、プーチン大統領は5日に南部ソチで行われた国際討論フォーラム「ワルダイ会議」で、「核実験を再開すべきだとの声は聞いている。今、再開すべきかどうか話す用意はないが、ロシアは米国に対し『鏡』のように対応する」と言及。CTBT批准撤回の権限は議会にあるとも話し、議会での対応を促した。