ロシアは核実験を再開するのか?CTBTから離脱、プーチン大統領は「準備を万全とする」よう命じた 「シベリアでやれ」「米国に分からせろ」相次ぐ強硬発言、核拡散防止体制に危機
議会は下院が17日に撤回法案の審議を開始。法案は全議員の95%超に当たる438議員により提案された。大統領府第1副長官を務めたプーチン氏の側近、ウォロジン下院議長が「可決は米国の厚かましさに対するわれわれの答えになる」と演説すると、議場は拍手に包まれた。18日に全会一致で可決され、上院でも可決された。 ▽20年以上も批准せず CTBTについて、核二大国の米国とソ連はともに1996年に署名。ソ連の核兵器を継承したロシアは2000年6月に批准した。 一方、米国は1999年、共和、民主両党の党派対立などから、権限を持つ上院での批准に失敗。その後も(1)ロシアなどが小規模核実験を行っても検知できない恐れがある(2)安全保障上のフリーハンドが持てない。実験なしでは核兵器の信頼性が確保できない(3)潜在的敵国である中国、北朝鮮、イランなどが署名または批准せずに核開発・強化を進めるなど、CTBT、核拡散防止条約(NPT)は既に形骸化している―などの主張が強く、批准に必要な3分の2の賛成票を得られていない。
米国は92年に実験のモラトリアム(一時停止)を始め、現在まで行っていないものの、ロシアの批准から20年以上にわたってCTBT未批准の状況が続いている。 ▽ウクライナ問題 ロシアはなぜ今になって、核実験再開に結びつく動きに出たのか。公式には、未批准の米国への対抗措置との立場を取っているが、背景には米国の実験再開に対する警戒とともに、ロシアとの戦争でウクライナを支援する西側へのけん制の狙いがあるのは間違いない。 ロシア外交問題評論の第一人者である国立研究大高等経済学院のドミトリー・トレーニン教授は8月3日掲載のロシア紙コメルサント(電子版)とのインタビューで、ロシアのCTBT批准撤回の動きについて、激化するウクライナでの戦闘を反映したもので、核の抑止力を使って西側のウクライナ支援を阻止する目的があると強調した。 10月18日のロシア下院のCTBT批准撤回法案可決を受け、ロシアの国営メディア「スプートニク」は、米国が国際問題で譲歩しなければ、ロシアは批准撤回に続き、CTBTからの脱退、地下核実験、次いで大気圏核実験を行う用意があるとの論評を掲載。「米国にはまだ考える時間がある」と警告した。