ロシアは核実験を再開するのか?CTBTから離脱、プーチン大統領は「準備を万全とする」よう命じた 「シベリアでやれ」「米国に分からせろ」相次ぐ強硬発言、核拡散防止体制に危機
▽実験場の現状は ソ連は1949年から90年にかけ、主にノバヤゼムリャ島と現在のカザフスタンのセミパラチンスクで、計715回の核実験を実施。以後もロシアはノバヤゼムリャ島の実験場を保持し続けている。 実験再開が決まれば同島で行われる可能性が高いが、米CNNテレビ(電子版)は9月23日、核不拡散問題の米専門家による衛星写真分析などから、ネバダ、中国新疆ウイグル自治区ロプノールの実験場と並び、ノバヤゼムリャでも近年、核実験の準備ともとれる施設建設が続いていると報じた。 一方、長期にわたり衛星写真などでノバヤゼムリャ島の動静を分析している環境問題非営利団体ベロナ財団(オスロ)は、10月のリポートで、2000年代初めに将来の地下核実験用に造られたとみられるトンネルなどに大きな変化はなく、差し迫った実験準備の兆候はないと報告した。 情報は錯綜しているが、ロシアの核兵器開発を担う全ロシア実験物理学科学研究所の研究責任者ビャチェスラフ・ソロビヨフ氏は2月8日、タス通信に対し「ノバヤゼムリャでは実験の準備ができている」と明言、政治的な決断が下ればすぐにも実施できる態勢であることを強調している。 ▽懸念
ロシアのCTBT離脱に伴い生ずる懸念は核実験再開だけではない。 核軍縮や核実験、CTBTの問題に詳しい防衛省防衛研究所の一政祐行サイバー安全保障研究室長は「現時点で、ロシアの批准撤回は、新戦略兵器削減条約(新START)履行停止などと同様、国際的戦略環境の変化に伴うもので、米国に圧力をかける狙いがある。他国への影響や核拡散リスクを考慮すれば、核実験再開は必ずしも合理的な選択とは言えず、また核兵器の開発・維持といった技術面でも、核実験の必要性が高まっているとは考えにくいとの指摘もある。切迫した状況にはないと見ているが、最終的にはロシアの政治決断になる」と分析。 一方で「ロシア国内には(核実験の早期探知・検証のための)CTBT国際監視制度の観測施設が多数設置されているが、今後、CTBT離脱で同施設の管理状況が悪化する、あるいは観測データの送信が滞るなどすれば、北朝鮮の核実験監視などにも影響が生じかねない懸念がある」と指摘した。