【社説】プラごみ汚染 防止条約へ各国は協調を
プラスチックごみが地球環境を汚染し、生態系を脅かしている。私たちの暮らしにも関わる問題だ。 実効性のある対策を早急に実行しないと、事態はますます深刻になる。各国は合意形成に努めてほしい。 国連環境総会は、プラごみ汚染を防止する国際条約を2024年中にまとめる目標を掲げていた。 先月から今月にかけて韓国で開かれた政府間交渉委員会では合意できなかった。極めて残念だ。来年の再協議に期待する。 環境汚染を防ぐには、プラスチックの原料や製品の生産から廃棄まで、全ての段階で対策が必要となる。 会合で意見が対立したのはプラスチックの生産規制だった。環境対策に熱心な欧州連合(EU)が厳しい規制を求めたのに対し、プラスチック原料の石油を産出する中東諸国は強く反発した。 EUやアフリカ、島しょ国などは、今回は生産規制を盛り込まず、条約発効後の締約国会議で削減目標を設定することを提案したが、産油国側は一切の妥協を拒んだ。 プラスチックの大量生産、大量消費は環境に大きな負荷を与えている。現状を踏まえると、一定の生産規制は避けられない。段階的な削減を検討すべきではないか。 日本は「できるだけ多くの国が参加する条約を目指す」との立場で、産油国にも理解を示した。交渉ではあまり存在感を発揮できなかった。 日本は1人当たりの使い捨てプラスチックの使用量が、米国に次ぎ2番目に多い。海洋汚染にも直面している。今後の交渉では、より積極的な役割を果たす責務がある。 プラごみの被害は国によって大きな差がある。気候変動に比べて問題意識が世界中に浸透していないことも、歩み寄りを困難にしている。 各国は危機感を共有しなくてはならない。経済協力開発機構(OECD)によると、世界で生産されるプラスチックの量は40年に7億トンを超える見通しだ。20年の1・7倍に当たる。 リサイクルや適切な処理をされず、環境中に流出したプラごみは年間2200万トンに上る。このまま推移すると50年までに、海へ流入したプラスチックの総重量が魚を上回るという試算もある。 プラごみが漂着する島しょ国では、漁業や観光に影響が広がっている。海洋生物や鳥が餌と間違って食べたり、体に絡まったりして死ぬ事例は少なくない。 直径5ミリ以下のマイクロプラスチックは人体からも検出され、健康に影響する恐れが指摘されている。 軽くて丈夫で、安価なプラスチックは日常生活に欠かせない。すぐに使うことをやめられなくても、過剰包装の見直しなどで消費量を減らすことはできる。私たちの身近なところからプラごみの削減に取り組みたい。
西日本新聞