オーバーツーリズムの実態調査、6割の地域が混雑を実感、難題は「交通問題」、広域連携がカギに
リクルートで観光に関する調査・研究を手がける「じゃらんリサーチセンター」は、このほど、全国の観光行政や民間企業を対象に、オーバーツーリズムや観光客の平準化・分散化に関する対策の現状調査を実施した。それによると、訪日客数がコロナ禍以前を上回るペースで好調に推移する一方で、国内主要都市および観光地で人手不足の解消に加え、広域エリア間の連携が重要であることが浮き彫りになった。調査は2024年8月28日~10月4日に実施し、956行政団体・事業者から回答を得た。
約6割の地域が混雑を実感
まず、コロナ前(2019年)と比較して、自地域の旅行者増加による混雑度はどの程度かという問いに対し、「混雑している」「やや混雑している」は生活エリアで59.7%、業務エリアで63.4%と、ともに約6割の回答者が混雑を感じている結果だった。観光客が増加したことで「良い影響が出ている」と回答した人は生活エリアの52.4%に対し、業務エリアは75.7%と、観光行政・観光関連事業者は、観光客の増加により、業務や事業に対して好影響を感じている様子がうかがえる。 一方、混雑エリアでどのような問題が発生しているかについては、「生活圏の雰囲気が変わった」「マナーが悪い旅行者がいる」の順で高く、「あてはまる」「ややあてはまる」の合計がそれぞれ57.5%、52.2%だった。「旅行者で混雑して、普段使うバスや電車に乗車できない、お店に入れない」も42.6%に上った。 また、地域ごとの差をみると、「生活圏の雰囲気が変わった」は関西(72.9%)や九州・沖縄(66.3%)が高く、「物価や飲食店の価格などが急激に上昇した」は関東(60%)が高いなど、地域ごとに抱えている問題に違いがあることもわかった。
交通問題の解消が難題に
では、こうしたオーバーツーリズム対策について、観光関係者はどのように考えているのだろうか。 今後、必要度が高く、自地域で比較的にすぐ取り組むことができる対策は「インバウンドへのマナー啓発(多言語対応等)」が54.8%、「旅行者へのマナー啓発(情報発信)」が50.5%だったが、必要であるものの実施が難しい対策は「交通渋滞の解消(自家用車の入域規制、パークアイランド等)」(44.9%)、「公共交通の輸送力増強(連節バス、乗合タクシー、ライドシェア等)」(44.5%)に上った。同センターは「交通インフラなどの問題は地域単独では解決が難しい側面もある。分野横断的な連携を推進し、解決の糸口を探していく必要がある」などと分析している。 また、旅行客の分散・誘客対策がされていないと回答した453人のうち、されていない理由は「人材(スキル・専門性)が不足している」(40%)、「人手(労働力)が不足している」(38.4%)に加え、「エリア間の連携・役割分担が難しい」(38.2%)だった。混雑エリア別でみると、北海道・東北、関東では「人手(労働力)が不足している」 「エリア間の連携・役割分担が難しい」 が約5割前後と高かった。 こうした結果を受け、リクルートじゃらんリサーチセンターは、「観光客の分散や非混雑地域への誘客を進めるためには、人材・人手不足とエリア間連携が大きな障壁となっている。一方でDMOなどのリーダーシップによる連携が進んでいる事例もあるため、今後の地域間連携強化に注目したい」などとコメントしている。
トラベルボイス編集部