適応力と内角攻め。なぜ侍ジャパンは5勝1敗でMLB軍団に圧勝できたのか?
日米野球の最終戦となる第6戦が15日、ナゴヤドームで行われ、侍ジャパンは2回に西武カルテットの活躍などで4点を奪い、守っては中日の笠原祥太郎が4回3分の2を無失点に抑える好投を見せる1失点リレーでMLBオールスターに4-1の完勝。通算成績を5勝1敗で終えて来年の「プレミア12」、再来年の東京五輪へ向けて弾みをつけた。5勝は日米野球の歴史上、最多の勝利数。稲葉ジャパンは、なぜ5勝1敗の結果を残すことができたのだろうか。
「前へ進めた。形は見えてきたかな」 稲葉篤紀監督は胸を張って大会を総括した。 MLBオールスターの投手陣は2桁勝った投手が一人もいない“2線級”で、野手も1か月のブランクを経てのハンデ付きの来日だったが「モリーナなんかはシーズンと同じようなリードをしてきていた。結構、本気にさせたんじゃないか。予想以上の結果といったら失礼になるので、予想通りと言えばいいのか」と6戦を振り返った。 有終の美を飾った。 侍ジャパンは大会ラストマッチを1失点リレーで締めた。 地元の先発に抜擢された笠原が4回3分の2を無失点。ストレートは130キロ台だが、そのボールの角度と出所がわかりづらい“笠原マジック”にチェンジアップを織り交ぜてメジャー軍団を幻惑。得点圏に走者を背負いながらも粘った。 4試合ぶりの先制点を演出したのは、スタメンに名をつらねた西武の4人。2回に先頭の山川穂高が四球を選び、先発マスクをかぶった森友哉、外崎修汰の連打で無死満塁にすると9番の源田壮亮が、体を開きながらも重心だけは残して変化球に反応。ファウルにせずライト線にボールを運び走者一掃のタイムリースリーベースとした。 「いい流れで回ってきたので勢いに乗れた」 秋山翔吾の姿がヒントになった。 「秋山さんのバッティングを見ていると、小さくしたりタイミングを変えたりされていた。秋山さんでも、そういうことをやるんだと話を聞きながら、始動を早くしてみたり、いつもよりボールを中へ入れてみたり、色々と試した。前へ飛ばすと何か起きるのかなと。来年以降につなげられるような収穫があった」 直接アドバイスをもらい対メジャー用に工夫した。 5勝1敗の中身を吟味すると国際試合への適応力の高さが浮き彫りになる。 日本の中で最も、その国際適応能力の高いのが源田が手本にした秋山である。 実は、大会前の合宿中に稲葉監督は、秋山と菊池涼介の2人を呼び、「このチームを頼む」とリーダー役に任命していた。豊富な国際経験と人格を買っての指名だが、秋山には、バッティングの技術面での波及効果を期待しての信頼もあった。 秋山は、実際、足の上げ方を含め、フォームそのものをコンパクトに修正しながら、6戦の中で国際ゲーム用に見事な変貌を遂げていた。 その秋山に極意を聞く。 ――WBC経験もある秋山さんが最も国際適応能力が高いと見るのだが? 「適応力が高いかどうかはわかんないですが……強いボールを打ち返す力がいかに足りていないかがわかりました。カット、ツーシームは、そもそも打つのは難しいボール。甘く入って打てるボールもあったなかで、ちょっと押されている感じを受けたんです。課題はありました」