適応力と内角攻め。なぜ侍ジャパンは5勝1敗でMLB軍団に圧勝できたのか?
――その中でコンパクトにフォームをまとめて適応した。 「(フォーム、タイミングなどの修正は)意識してやりました。6試合あって試行錯誤する中で、結果的にそうなったんです。この先、長い期間の大会があったり、アメリカのボールと対戦するとなったら、一発で結果を出さないといけません。そこで自分が最善と思う打ち方をしなければならないんです。だから、このときは、こうしておけばという対策が出てくるかなと考えながら試行錯誤をしてみました」 ――今日などはシリーズの序盤に比べてさらにコンパクトになっている印象を受けた。 「無意識に球を強く、長く見すぎたのかもしれません。小さくしすぎてもタイミングがとりづらく、(コンパクトに)なりすぎてもよくないんです。本当は意識していることをなるべく変わらないように打っていき、いい方に出れば、もうちょっと打てたのかもしれません。反省というよりいい経験として生かしていければいいですね」 秋山は、いつも誠実に取材ゾーンで足を止め真摯にメディアに対応してくれる。稲葉監督が、そういう人格者の秋山にリーダーを託した理由もよくわかる。 不振の山川も、この日は、フォームをガラっと変えていた。彼の場合、結果は出なかったが、適応しようという姿勢はあった。秋山発の“メソッド”がチームに浸透していた。 「いろんな選手と話をしながらやってきました。技術の高い選手が集まっていますから、各々が思ったことをやればいいんです。疑問があれば聞いてくれればいいし、逆に僕が聞くこともあります。年齢とかは関係なくチームとして戦っているんです。情報の交換があって、いろんな引き出しが増えれば日本人の動くボールに対する技術力も上がります」 ――秋山さんなりにつかんだ国際試合の極意を言葉にするならば? 「(国際試合の)初見で打席に立つときは、どう情報を処理して打つボールを決めて、タイミングを合わせて振れるか、なんです。そのシンプルさが大事。だから必要な情報は自分で聞きにいくこと。言ってくれそうな人を探してね。情報がいらない人に言っても迷わせるだけになります。選手が左右してしまいます。シーズン中もそう。自分が打席に立つときに迷わない。そういう準備が必要です。メジャーのボールを長く体感できたという意味で、この日米野球の意義は大きかったと思います」 その秋山の言う“シンプル”を開幕戦からいきなり体現したのが、ソフトバンクの柳田悠岐だろう。第1戦でメジャー軍団を真っ青にさせた逆転サヨナラ2ラン。彼の場合、適応ではなく持っているものをぶつけたのだ。 「バットももらえたしね。いいことだらけだった。オリンピックに向けてアピールしなきゃいけない立場なんで思い切って頑張りました」 収穫は何か?と聞かれた柳田は「ホームランを打ったことかな」と答えた。 秋山が試行錯誤の末、たどり着いた「来た球を打つ。シンプルイズベスト」のスタイルを柳田は天性のセンスで実行したのである。 ソフトバンクの同僚、上林誠知も、6戦全試合でヒットを打った。 「3試合はリードして逆転された。今日は序盤から点をとられたが、私たちは、3、4、5回とノーアウトで走者を出したが1本が出ずに点が取れなかった。だが、日本には1本が出た。その差がシリーズを通しての日米の大きな違いだったのではないか」 マッティングリー監督は、日米の5勝1敗をそう総括したが、短期決戦で“シリーズ男”が2人も出るような打線は止めようがなかったのだろう。