ポルシェ・タイカン 詳細データテスト 952psへ強化 進化したバッテリー 快適なアクティブサス
はじめに
時の経つのは早いもので、ポルシェがEVでもいかにみごとな走りを可能にするか世に示したのは、まるでつい最近のことのように思える。ところが、それを成したタイカンが2024年に改良のタイミングとなり、コードネームはJ1からJ1 IIへと移行した。 【写真】写真で見るポルシェ・タイカンとライバル (8枚) 呼称の変化はずいぶんと単調で、おそらく新車で買える中でもっとも関心を集める電動車へのアップデートがもたらしたかなり大きな変化と、それに費やされた莫大なコストには見合わない。ほんの5年で、EVに関する技術は大きく進歩。バッテリーは容量拡大のみならず、軽量化も実現した。充電も早い。6291ポンド(約124万円)払う余裕があれば、アクティブサスペンションも追加できる。 また、この5年間でタイカンはラインナップを大きく拡げた。ポルシェのEVはニッチなサブブランドではなく、後輪駆動の純粋主義的モデルから、クロスオーバー仕立てのワゴンタイプまで揃え、そのうえGTディヴィジョンが手掛けるヴァイザッハ・パッケージまで選べる。911GT3や、ケイマンGT4でもあるまいに。結果、英国での販売車種は14にのぼる。価格は、最廉価版が7万5555ポンド(約1488万円)から8万6500ポンド(約1704万円)に値上がりし、上は20万ポンド(約3940万円)近い。 今回テストするターボSは、そのモデルレンジの中でもかなり上位で、多くのユーザーが求めるもの以上のタイカンだ。しかし、標準仕様でも新技術を多く内包し、さらにオプションにも新機軸を揃えるので、今回の進化ぶりを知るにはもってこいといえる。また、スペック表どおりであれば、われわれがこれまでテストしたなかでもっとも加速のいいクルマということになる。 誕生時よりも多くのライバルに取り囲まれている現在のタイカンは、それらを退けるに値する実力を、最新の改良で得ているのだろうか。
意匠と技術 ★★★★★★★★★☆
重要なアップデートはふたつ。そのひとつが、新たなニッケル・マンガン・コバルト電池パックだ。実用容量は82kWhと97kWhの2種類で、グレードやオプションにより異なる。セルの組成がこれまでと異なり、放充電とも素早くなっている。97kWh版は、最大充電性能が直流320kWだ。 あわせて、よりハイパワーで効率的な新型インバーターを採用。リアの主モーターも刷新し、マグネット配置を変え、ステーターのコイルはより効率のいい巻き方に。出力は最大108psアップしている。シングルーモーター仕様は、このモーターが1基のみで、2速ATを介して後輪を駆動。2モーター車は、フロントにモーターと1速ギアボックスを積む。 2種類のバッテリーも、新型リアモーターも、うれしいことに従来型より重量を削減している。そのほかにも広範囲にわたる細かな改良を積み重ね、エントリーグレードのタイカンにオプションのパフォーマンスバッテリー・プラスを追加した仕様の航続距離は、WLTP混合値で446kmから679kmへ大幅に伸長した。マイナーチェンジとは思えないほどの進歩で、ほかのグレードもそれぞれ従来型より改善をみている。 パワーについても、エントリーグレード以外は向上した。4Sは598ps、ターボは884ps、ターボSに至っては952psだ。ただし、これらの数字はローンチコントロール作動時か、オーバーブーストスイッチを押した際の、瞬間的に発揮される数値に過ぎないが。リアモーターの直径は全車共通の254mmだが、ターボ系は長さが130mmから210mmに伸びる。 全車ともエアサスペンションとなり、リバースカメラや前席シートヒーター、パワートレイン用ヒートポンプ、スマートフォン用ワイヤレス充電器も標準装備される。 オプションでは、新開発のポルシェ・アクティブライドシステムを設定。インターリンクしたアクティブダンパーで、電動油圧リザーバーにより各輪のダンパーを操作して、スムースな乗り心地と、瞬時の車体姿勢制御を行う。テスト車には、4WSと合わせて搭載されていた。