フランスの「半大統領制」とは? マクロンにとって正念場の国民議会選
国民議会選の結果、考えられる4つのパターン
マクロンはオランド大統領左派政権の経済相でしたが、2016年4月に自身の政治運動「前進」を結成し、同年8月に経済相を辞任しました。しかし、「前進」は現在国民議会に1つの議席も持っていません。マクロンは既存政党に所属しない「独立候補」として大統領選を戦い、第一回投票で最大の票数を獲得し、第二回の決選投票で極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペンに勝利しました。 マクロンは5月14日に新大統領に就任し、首相には国民議会第2党の共和党(中道右派)からエドゥアール・フィリップ氏を指名しました。そしてその後、組閣を行います。しかしこの内閣は6月の国民議会選挙までの短命内閣なので、議会運営との関係はさほど問題とならず、さまざまな人物が首相候補として挙げられています。 重要なのは6月の国民議会選挙の後に行われる首相任命と組閣です。国民議会議員の定数は577で、国民議会選挙は小選挙区制の二回投票制により行われます(今回の投票日は6月11日と18日)。 マクロンはすべての小選挙区で「前進」から候補者を擁立し、国民議会で「前進」候補者による単独過半数を獲得しようとしています。これが実現した場合、マクロンは「前進」から首相任命・組閣を行い、大統領がリーダーとなる中道単独政権となります(パターン1)。 しかし現在の世論調査では、「前進」が単独過半数を獲得することは難しいと予測されています。中道政党である「前進」が単独過半数を有しない第一党となった場合、マクロンは国民議会で議席を持つ他の会派との連立内閣を形成しなければなりません。首相は「前進」から任命されるとしても、内閣は「前進」だけでなく連立を組む会派からも構成されるので、マクロンはリーダーシップをとりながらも、「前進」と連立内閣を組む他の与党会派の意向にも配慮していかなければなりません(パターン2)。 反対に、世論調査が外れ、「前進」が第二党になり、他の会派が単独過半数を有しない第一党となった場合は、マクロンは国民議会の第一党から首相を任命して連立内閣を形成し、その首相がリーダーシップを発揮することになるでしょう(パターン3)。 さらに、他の会派が単独過半数で第一党になった場合、「前進」は第一党との連立内閣すら形成できず、大統領の会派と国民議会多数派及びそれに依拠する内閣の会派とが一致しないコアビタシオンが生じることになります。(パターン4)