フランスの「半大統領制」とは? マクロンにとって正念場の国民議会選
国家元首の大統領、内閣の長である首相
ではフランスの「大統領」と「首相」は、それぞれどのような役職なのでしょうか。 フランス憲法によれば、大統領は国民の直接公選によって選出され、その任期は5年です。大統領は、第一に、憲法の尊重を監視し、その裁定により公権力の適正な運営と国家の継続性を確保する(例えば、大統領は、議会で可決された法律を認証する前に、議会に再審議を要求することができます)とされています。そして、国家の独立、領土の統一性と条約の尊重を確保します。大統領は、首相を含む大臣を任免し、閣議を主宰し、議会で可決された法律を認証するほか、閣議決定された政令に署名・特定の上級公務員を任命し、首相の提案に基づいて政府憲法改正案を提出できます。さらに、大統領は軍隊の長でもあり、その指揮権を有しています。このように大統領は国家元首としての役割と行政府の長としての役割も果たしています。 大統領には国民議会(下院)を解散する権限がある一方で、極めて例外的な場合にしか議会による罷免はなく(実際に罷免された例はありません)、また連続での三選は認められていません。 それに対し、首相は大統領によって任命されます。大臣は首相の提案に基づき大統領によって任命され、組閣が行われます。内閣は国政を決定・遂行し、行政機構と軍隊を管理・運営し、議会に対して責任を負います。 首相は内閣の活動を指揮し、法案提出権があります。政府法案は閣議決定されて議会に提出されますが、大統領による閣議の主宰は形式的なもので、大統領は閣議決定において実質的な権限がありません。さらに首相は、法案について国民議会に対して内閣の責任をかけ、法案をめぐって不信任決議案が可決されない限り、成立させることができます。 例えば、2016年7月に成立した労働法改正案では、同法案を強制通過させた当時の社会党内閣に不信任決議案が提出されましたが、否決され、上院の元老院で審議が進められた経緯があります。他にも首相・内閣はさまざまな憲法上の権限を有しています。 このように憲法の規定では、内閣こそが国政を決定・遂行する任務を負っているのであり、この内閣を率いる首相も行政府の長としての役割を果たしています。フランスには行政府に「大統領」と「首相」という2人のリーダーが存在し、この政治体制は「行政府の双頭制」と呼ばれます。 なお、主要国首脳会議(サミット)では、各国の大統領や首相が居並びますが、フランスの場合、サミットには大統領が出席します。