なぜ菜七子に憧れる2人のJRA女性ジョッキーはホロ苦デビューとなったのか…師匠採点は「30点」と「40点」
その後は6レースを7番人気のトーホウロッキーに騎乗。4コーナーから直線にかけ、ワープするようにインに進出して5着に浮上した。最後、ふわふわっと体がぶれたのは経験のない2000m戦という距離も影響したのかもしれない。9レースは6番人気のデフィで12着。記念すべき初日に永島も勝利の美酒は味わえなかった。 小倉競馬場でレースを見守った高橋康調教師も、愛弟子とのミーティングを終えると、「全体的なレースの感覚は悪くなかった。騎坐もしっかりしており、まだまだ粗削りで改善するところはあるけど、冷静に判断できていたのではないですかね」と一定の評価を下した。「指示待ち人間ではダメ。自分で考えなさい」が高橋康調教師の指導方針。「今日も指示はしていません。馬の癖なんかを頭に入れ自分で考えて乗ってほしいのです。事前に騎乗プランは聞いていました。レースではその意図が伝わってきました。大切なのは、それぞれの馬の性格、気質、動きを早くつかむこと。初日の点数をつけるとしたら40点かな。でも、本人は、もっと低い点をつけると思う。相当悔しがっていましたから」と言う。 永島は地方競馬「園田」の名手としてならした永島太郎調教師の次女。競馬一家に育ったが、3姉妹の中で「馬に乗りたいと言ったのは私だけだった」そうだ。5歳から馬に乗り始め阪神競馬場の乗馬センターに通った。その“ジョッキー遺伝子”に疑いはない。 JRAの女性騎手は1996年に細江純子、田村真来、増沢(旧姓牧原)由貴子の3人がデビューして以来、これまで7人。最も早く初勝利を挙げたのは2000年の西原玲奈の9戦目だ。2人が憧れる藤田菜七子は2016年3月3日に地方の川崎競馬場でデビューしたが、JRAでの初勝利は4月10日の福島9レース、通算51戦目だった。 この日は、計8人の新人騎手がデビューし、小沢大仁、永野猛蔵が初騎乗初勝利という快挙を達成した。2勝をマークした小沢は、同期のライバルを「悔しいだろうけど、それが焦りにならないように」と激励したが、古川は、「小沢くんに勝たれて悔しい」と素直な感情を口にした。負けん気は強い。 実は、あの“レジェンド”武豊の初勝利はデビューの翌週だった。 「ジョッキーという仕事は経験が大事。8人の新人を温かい目で見守ってあげてください」 武豊は2人の女性騎手にエールを送った。 初勝利を目指し古川は今日7日に阪神で4レース、永島は小倉で5レースに騎乗する予定だ。(文責・山本智行/スポーツライター)