『国民の目』今後も前提」金子春菜弁護士、「旧文通費、費目の明確化を」佐藤ゆかり元衆院議員、「小手先の改革を許すな」神戸学院大・上脇博之教授 政治資金規正法再改正インタビュー(下)
私が国会議員だった頃、文書通信交通滞在費(現・調査研究広報滞在費)は東京の秘書が地元入りする際の交通費や宿泊費、電話代、ニュースレターの印刷代や郵送代に使っていた。絶えず経費がかかるため、余剰が生まれるという実態はなかった。仮に余剰が出れば「色」がないお金を使い切ろうとするインセンティブ(動機づけ)が生まれかねない。この点でも残金返納の議論はあまり意味がないように思う。 2022年の法改正で名称が変わり、使途が事実上広がった。秘書給与や事務所費に充てるといった、本来の趣旨から逸脱した使い方が指摘されるようになった。 旧文通費は税金が原資だ。使途公開の義務化を早急に進めるとともに、旧文通費を充ててよい費目を法律で明確化すべきだ。全ての議員が認識を共有して支出すべきだ。 議員活動は赤字体質だ。政策活動費は廃止すべきだが、企業・団体献金も禁止すれば政治資金パーティーへの依存度がさらに高まり、政策に集中できなくなるだろう。純粋な浄財であることも多い企業献金まで禁じれば、民主主義の根幹を揺るがしかねない。一方、私設秘書の総人件費に上限を設けるなど、支出側の改革も進めるべきだ。
6月に成立した改正政治資金規正法は「途中段階」と認識している。衆院選の結果を踏まえ、国民が納得できる抜本改正を目指すべきだ。与党だけで議論を進めず、野党も是々非々で臨んでほしい。深く切り込んだ再改正となることを期待している。 × × × さとう・ゆかり 1961年東京都生まれ。経済学博士、関西学院大フェロー、コンサルティング会社「フューチャーアナリティクス」代表取締役。多くの企業で社外取締役も務める。 × × × 調査研究広報滞在費 歳費とは別に、国会議員に月100万円支給される手当。歳費法などで規定されている。2022年の法改正で「文書通信交通滞在費」から名称変更した際に日割り支給となり、目的を「国政に関する調査研究、広報、国民との交流、滞在等の議員活動」と定めた。国会議員の「第2の財布」と呼ばれ、不透明さが批判されている。 ▽裏金事件の解明が実効性ある法改正につながる―神戸学院大の上脇博之教授