安倍首相の真珠湾訪問 日米に残った「わだかまり」は解けたか
太平洋戦争の端緒となった真珠湾攻撃。その地を訪れた安倍晋三首相は、オバマ米大統領とともに「和解の力」訴える演説を行いました。今年の5月にはオバマ大統領が広島を訪問しましたが、今回の首相の真珠湾訪問をどう見るか。元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】オバマ米大統領の「広島」訪問 最大の意義とは?
●歴史的一歩
安倍首相は12月27日(現地時間)、ハワイの真珠湾を訪問し、アリゾナ記念館でオバマ大統領とともに戦死者を追悼しました。また、その後の演説で、戦争の惨禍を繰り返さない決意を表明するとともに、日本に対して示された寛容の心に感謝し、和解の力を強調しつつ世界に向かって訴え続けていくと述べました。戦後、ハワイを訪れた日本の首相は数人いましたが、真珠湾で戦死者の慰霊を行ったのは安倍首相が初めてであり、日本と米国の関係において歴史的な一歩となったと思います。 ハワイは世界でも屈指の観光スポット。日本人観光客も毎年大勢押し寄せ、楽しいひと時を過ごしています。しかし、真珠湾は75年前、日米間の戦争が始まった場所にほかなりません。今でも心にわだかまりを抱いている人は少なくないでしょう。 なぜ日本軍は1941年12月7日、真珠湾の米軍基地を攻撃したのか。 なぜ米国人はこの攻撃を不意打ちであったと見ているのか。 なぜ日本は、攻撃の前に宣戦布告しなかったのか。 なぜルーズベルト大統領は日本の攻撃意図を事前に知っていたのに米国民に教えなかったのか。 日米間の戦争については歴史や国際政治の立場からさまざまな研究が行われており、日本が米国を攻撃する前に、米国では対日石油禁輸、日系米人に対する差別的な強制移住などさまざまな出来事があったことや、米国は一方的に日本に敵対行動を取ったのではなく、日本が中国などへ侵略したからであったことなど研究し尽くされていると言っても過言でないでしょうが、私は説明をいくら読んでも、いくら聞いてもわだかまりを完全に解くことはできません。