安倍首相の真珠湾訪問 日米に残った「わだかまり」は解けたか
●和解の精神
戦争の開始だけでなく、戦争状態の終結に関してもわだかまりが生まれました。とくに、日本が極東軍事裁判で一方的に裁かれ、また、サンフランシスコ平和条約でその判決を受け入れたことにより、日本は国家として弁明できなくなったからです。 安倍首相の真珠湾訪問に反対する人たちにはそのようなわだかまりがあり、なかには極東軍事裁判についての見方を変えるべきだと主張する人もいます。しかし、極東軍事裁判を見直すことは不可能です。国家として平和条約で受け入れたからには、それに異を唱えることはできません。日本の行動について公に弁明する道はないのです。 わだかまりを解くには、相手方と和解することが必要だと思います。戦争を起こした責任はどこにあるかを忘れるのではなく、責任は明確にし、かつ償いをし、また受け入れつつ、戦争は過去のこととして心の整理をし、双方の現在および未来に影響させないことが肝要です。 安倍首相の真珠湾訪問は日米両国民の和解のために非常に意義深いことでした。日本の攻撃により命を落とした人たちを日本の首相が慰霊をし、また、米国が安倍首相に謝罪を要求しなかったことはまさに和解の精神を体現していました。
●戦争の悲惨さ
米国人の間には真珠湾を奇襲攻撃されたことについてのわだかまりが残っています。オバマ大統領が今年5月に広島を訪問する前に、米国務省から日本の首相が真珠湾を訪問しないかという打診があったことにそのわだかまりが垣間見えていました。 一方、日本側でもわだかまりがありました。米大統領の広島訪問と日本の首相の真珠湾訪問は性質が異なります。原爆は広島市と長崎市を攻撃し、犠牲となったのはほとんどすべてが一般市民でしたが、真珠湾攻撃は米海軍の艦船を無力化するため米軍基地を対象に行われたからです。 しかし、実際には米国政府は広島と真珠湾を関連付けることを控え、また日本政府は関連付けしないことを条件にしませんでした。両政府とも和解に努めた結果だったと思います。 私は、真珠湾攻撃も広島・長崎への原爆投下も戦争の悲惨さを象徴していたのであり、それぞれについてのわだかまりを真珠湾訪問、あるいは広島訪問で解くことは極めて有意義なことだったと考えています。