なぜ私は『松島トモ子 サメ遊戯』のような映画を作り続けているのか…「バカ映画」の巨匠・河崎実監督かく語りき
『ギララの逆襲』は予算億単位。でもコケた
河崎 『イコちゃん2』からは完全に、スタッフ構成は撮影、照明、録音、メイク、衣装、みんなプロの体制になりましたよ。自ずとね。 ―― 予算もだいぶ増えたんじゃないですか。 河崎 今度はそうなると、スタッフの拘束費がかかるじゃない。今までみたいに自主映画で無限に撮るみたいなことはできなくなってきたからね。だから、なおさら段取りをやるというのを覚えたからね。覚えざるを得なかったというか。今もそうなんですよ。来月の映画も俺が全部やってるんだから。 ―― 準備を。 河崎 うん。準備、美術、小道具、香盤表、演技事務。昔と全く変わらないというかね。この後、だんだん大作映画になって、『いかレスラー』(04)とか『日本以外全部沈没』(06)とか、俺の第2バブル期だけどさ。 ―― 『ギララの逆襲』(08)なんかもかなり予算がかかってますよね。 河崎 あれはかかりましたよ。億単位で。 ―― じゃあ、それが最大規模ですか? 河崎 あれがマックスだね。まあ、コケたけどね(笑)。 ―― そうですか。 河崎 残念ながら。まあ、ベネチア映画祭に招待されたのが唯一のインチキの誇りですよ。映画ってやっぱりインチキじゃないですか。俺はそう思うんですよね。見世物小屋と同じなので。 ―― これは松竹に企画を持ち込んだんですね。 河崎 『日本以外全部沈没』が当たったので、向こうから話が来たんですよ。 ―― ああ、そうですか。 河崎 「うちにギララっていう怪獣が居るんですけど、どうですかね」っていう。「もちろんやらせていただきます」って。 ―― それはそうですよね。 河崎 『ギララ』は井筒(和幸)監督とか大森(一樹)監督とかいろんな監督が撮りたがっていたんだけど。 ―― そうなんですか。
河崎 ただ、普通の監督が撮ったら10億円かかるじゃん。だから無理だったんだけど。わけの分からない監督だったら安く上げてくれるんじゃないかと思ったけど、ちょっと当てが外れたよね。 ―― でも、ビートたけしさんが出てましたね。声だけ? 河崎 いやいや。声とキャラクター権と。 ―― タケ魔人の顔は相当本人に似てましたもんね。 河崎 だから、俺はそういうキャスティングの人なんだよね。無名の人ばっかりでいい映画が作れる監督も居るじゃないですか。『カメラを止めるな!』とか、最近の『侍タイムスリッパー』もそうだけど。俺は違うんだよね。誰が出てるんだ、ってことが大事。