「内縁の妻に財産を遺したい」→行政書士の教える「遺言の書き方」が具体的だった
● 内縁の配偶者や同性のパートナーにも 遺言書があれば堂々と遺せる 内縁の妻は内縁の夫の法定相続人にはなりません。したがって、内縁の夫の財産を相続する権利はありません。 ちなみに相続以外の方法で、たとえば生前贈与や死因贈与契約によって、内縁の妻に財産を遺すこともできます。しかし、生前贈与は高い贈与税がかかりますし、死因贈与契約は特に預貯金の場合は払戻しを金融機関から拒否されるケースが多いので注意が必要です。 また、特別寄与料(編集部注/亡くなった人の介護など、無償で貢献した相続人以外の親族が、相続人から受け取れるお金のこと)も内縁の配偶者は対象外のため請求できません。生命保険はケースによっては、死亡保険金の受取人になることが可能ですが、いずれの保険会社も条件が多くハードルが高いのが実情です。 でも大丈夫です。遺言書を書いてあげれば、内縁の妻にも財産を堂々と遺すことができます。 条項例(2) 第○条 私は下記不動産を内縁の妻○○○○(住所、生年月日)に遺贈する。 (不動産の表示 省略) 第○条 私は前条の遺贈についての遺言執行者に内縁の妻○○○○を指定する。 条項例(2)は大事な住まいを財産として遺す書き方です。配偶者居住権は内縁関係には設定できないので(民法1028条など)、条項例(2)は自宅の所有権ごと遺贈する内容となっています。
もちろん遺言執行者は忘れずに指定してください。遺言執行者は内縁の妻を指定しても大丈夫です。そうすれば相続人の協力は不要なため、内縁の妻だけで手続きができます。 条項例(3)は、遺言者には実の子どもがいるが、離婚して現在は、同性のパートナーがいるケースを想定しています。この同性パートナーに財産を遺すときの遺言書の記載例が、条項例(3)です。 条項例(3) 第○条 私は下記の財産を○○○○(住所、生年月日)に遺贈する。 (財産の表示 省略) 第○条 私は前条で遺贈する以外の財産のすべてを長男○○○○に相続させる。 同性カップルも内縁の夫婦同様にパートナーの財産を相続することができませんが,遺言書で遺せば可能です。なお、遺言者に法定相続人がいる場合は遺留分侵害額請求のリスクも考慮したうえで書いてください。 もし「パートナーの存在を息子に伝えたいけど俺が生きてるうちは控える」という人は付言にて思いを伝えながらカミングアウトしてみてはいかがでしょうか。 また、お互いのために書き合う夫婦相互遺言のようにパートナー相互遺言(連名の遺言書ではありません)を作るのもよいですね。今後、法改正があるかもしれませんが、現行法でも遺言書なら大事なパートナーをしっかり守ってくれます。