“互いに頂点を目指したからこそ、当人たちにしか分からない悔しさがある” 夏の富士で坪井夫妻がみせた涙の理由
待望の初優勝であるものの、パルクフェルメに戻ってきた斎藤は、どこか喜び切れていない様子だった。そこに駆け寄ってきたのが、夫の坪井。その目には涙が溢れていた。
「トップを走っていたけど最後にスピンして逃した2年前のレースがフラッシュバックしてきました。あとは今年も開幕戦で悔しい思いをしているのを横で見てきたので…本人はどうか分からないですけど、どれだけ悔しかったかは同じドライバーだから分かるところでもあります」
「おそらく最後にセーフティカーが入らなくても、あのままトップで逃げ切っていたと思う。しっかりと自分の手で初優勝をとったというところで、いろいろと思い出して、向こうが泣く前にこっちが泣いてしまいました」(坪井)
優勝した自分よりも先に涙を流して喜んでくれる坪井の姿に「『自分、優勝したんだ…喜んでいいんだ』と思えるようになりました」と斎藤。不完全燃焼の形で初優勝となり、どこかモヤモヤした妻の気持ちを、夫が助けた瞬間だった。
【今度は妻から夫へ、KYOJO CUP 2レース目の力強い走りに「気合いが入った」】
日曜日のKYOJO CUP第3戦。前日の初優勝を経て、斎藤はさらに進化した走りを見せる。このレースも翁長、下野とともに1周目から激しいポジション争いを展開した。
「第2戦と違ってメインストレートが向かい風だったので、絶対に混戦模様になるだろうと三浦監督からも言われていました。自分としては『いかに落ち着いてレースをするか』がカギでした。そこは第2戦の時と変わらず、落ち着いてレースができたと思います」(斎藤)
さらに今回は金曜日の予選から1セットのタイヤで走り切らなければならず、タイヤマネジメントも大きな要素だった。それでも斎藤は「12周のレースでいかにタイヤを痛めずに最後まで走り切るかというところに焦点を当てて走り続けていたので、後半になってもタイヤが苦しくなるということはなかったです」と、今までの彼女にはなかった冷静さが垣間見えた。
そして、これまでは“鬼門だった”ファイナルラップで、斎藤は下野をオーバーテイク。狙っていたかとばかりにラストスパートをかけ、見事2連勝を飾ったのだ。