“互いに頂点を目指したからこそ、当人たちにしか分からない悔しさがある” 夏の富士で坪井夫妻がみせた涙の理由
今回は直後にスーパーフォーミュラの決勝スタート進行が始まる関係上、パルクフェルメに坪井の姿はなかったが、自身の課題をクリアできたと、斎藤は満面の笑みで写真撮影やインタビューに応じていた。
「第2戦では『最終ラップのバトルでトップを守り切る』という課題が、SC先導状態でレースが終わったことでクリアできませんでした。多分、いつもKYOJO CUPを見ている方は『たまたま勝てたのではないか?』『まだ課題が残っているのではないか?』と思われたかもしれません。今日はしっかり戦って勝つことができたので、速さも強さも証明できたので、非常に嬉しい優勝です」(斎藤)
この斎藤の頑張りが、直後に控えていた夫の決勝レースを間接的に助けることになる。
「あのレースを見せられたら『自分もやらなきゃな』と思いました。プレッシャーよりもスイッチが入ったという感じでした」(坪井)
前日の予選では0.030秒差で4番手に終わり、悔しさを見せていた坪井。スタート時の混乱で順位を落としてしまうが、そこから前のマシンを次々とオーバーテイク。ライバルが早めのピットストップを選択する中、全体の3分の2にあたる28周目までコース上に留まってピットイン。後半に追い上げてトップに躍り出るという作戦だ。
前半から好ペースで周回を重ねていた坪井ではあったものの、計算上では4~5番手付近で復帰することになる。つまり、残り少ない周回のなかで彼自身が自力でオーバーテイクをしないと優勝に届かないという状況だった。
それでも、この日の坪井はライバルを凌駕するスピードを披露。30周目の13コーナーで牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)を追い抜くと、そのままメインストレートで野尻智紀(TEAM MUGEN)の前に出た。この時点で実質トップの大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)は3.8秒の差があったが、すぐに追いついて34周目のコカ・コーラコーナーで逆転。その後は一気に後続を引き離し、まさに“誰にも手がつけられない速さ”を披露。2020年の最終戦以来、4年ぶりのトップチェッカーを受けた。