“互いに頂点を目指したからこそ、当人たちにしか分からない悔しさがある” 夏の富士で坪井夫妻がみせた涙の理由
スプリントレースであるKYOJO CUPにおいて、1秒以上の差は大きいなものであるのだが、斎藤にとっては“ここからが勝負”だった。
2020年からKYOJO CUP参戦をはじめ、早い段階から上位争いを繰り広げていた斎藤。そんな彼女に初優勝のチャンスが舞い込んだのは2022年の最終戦だった。
後半にトップを奪ってリードを広げたが、ファイナルラップに入る手前の最終コーナーで、近づいてきた後方車両に気を取られてハーフスピンを喫した。これで4番手に下がるものの、最後の1周で猛追して2位を獲得。自己最高位ではあったが、レース後の表彰式では悔し涙が止まらなかった。
翌2023年も表彰台争いには絡むが、優勝には手が届かず。そして“集大成の1年”と決めて臨んだ今季は、前年チャンピオンに輝いたTeam Mへ移籍し、三浦愛監督のもとでさらなるレベルアップを目指した。
そんな中で挑んだ5月の開幕戦では、予選で自身初のポールポジションを獲得。決勝では翁長実希(Car Beauty Pro RSS VITA)との一騎打ちとなるなかでリードを奪い、トップでファイナルラップに突入した。
今度こそ初優勝かと思われたが、翁長も意地のオーバーテイクを見せ、斎藤はまたしてもトップ陥落。レース後、意気消沈した様子で「またダメでした…」と話していた表情が印象的だった。
彼女にとって“鬼門のファイナルラップ”をトップのままクリアすることが、今回達成したい一番の目標。それを達成するために、第2戦までのインターバル期間で特訓を積んできた。
早速、第2戦で克服チャンスが巡ってきたのだが、10周目にコースオフ車両が発生してセーフティカー導入。レースが再開されないまま、12周を完了してチェッカーフラッグが出された。
「初優勝はとても嬉しいですが…悔しい気持ちもありました。セーフティカー先導のままで終わると、第1戦での課題をクリアできないままだったので、正直チェッカーフラッグが見えた瞬間は『このまま終わるんだ。悔しいな』という気持ちでいっぱいで、ガッツポーズもできませんでした」(斎藤)